【文スト】悪役令嬢になるのは、百歩譲っていいとして。 (ページ3)

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序章［眩い世界で。］ページ3

〔Your side〕

ひたすらに真っ白な世界。

その中で、僕は目を覚ました。

確か、僕は通り魔に刺されて殺されたはず。

そっと上体を起こし、自分の体を見下ろしても特に異常はなかった。

刺されたであろうそっと触ってみるが、特に痛みも感じない。

触ったという感覚もなかったが。

ふと思い立って前を見れば、そこにはさっきまでなかったはずの…一冊の本があった。

何もしないよりはマシかと、立ち上がり本の元へ近寄る。

よく見てみれば、その本は浮いていた。

何らかの原理なのか…、人間には手を出せない超常現象なのか。

なんとなしに、その本に手を伸ばせば瞬く間に眩い光に包まれた。

反射的に閉じていた目を開けば、そこはただの暗闇だった。

本当は、そこでずっと立っていればよかったのかもしれない。

けど、死んだはずの僕がなんでここにいるのか。

そのことを解き明かすまでは大人しくなんてしていられないとそう思った。

前へ(本当に前なのかわからないけど)進んで行けば、声が聞こえた気がした。

僕の名前を呼ぶ声。

もう、二度と呼ばれることがないであろう名前。

もう、二度と聞けない声。

死ぬことなんて怖くなかった。

死も含めての生だと思っていたから。

だけど＿＿今、死ぬことが寂しいと思った。

二度と声を聞けないこと。

二度と人を見れないこと。

二度と＿＿人の温もりに触れられないこと。

それがとても寂しくて、悲しくて。

僕の両目から涙が溢れて止まなかった。

それでも、歩む足は止まらなかった。

涙も、足も止まらなくて。どうすればいいのかわからなくなってしまった頃。

声が聞こえた。

『貴方は、何になりたい?』

誰の声なのか、幻聴なのか。

区別はつかなかったけれど、応えなければならないとそう思った。

『僕になりたいものはない。』

『ただ、人と生きられれば。』

人の温もりに気づける。人の、この世の全てのもののありがたさに気づける。

そんな人物に、僕は＿私はなりたかったんだ。

偽りの仮面を被らずに、素直に自分を出せるように。

応えを口に出した瞬間、眩い光に目が眩んだ。