完全肯定 (ページ7)

今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:8,921 hit

07:/ ページ7

九条くんからの連絡が途絶えて早2週間。

あれから一度も連絡がないままライブ当日になってしまった。

ネタ作りで忙しいのかな、なんて思って私からメッセージを送ることもなかったが、やはり寂しい。

いつもより入念にメイクをして、昨日買ったばかりの香水をつける。

私がいちばんかわいい！なんて鏡の前で念じながら支度を終える。

会場に入ると、自然に鼓動が早くなった。

九条くんは、舞台の上の人なんだ。

そんなことを思った。

『くじょう、じょー、か。』

会場の外に出ると、ひんやりとした風が私の体を冷やした。

九条、なんて芸名か何かかな、なんて思ってたけど、ほんとに芸名だったんだ。

九条くんのことだから、いつかぽろっと本名を教えてくれるんだろうな、と思いつつ、会場から出てくる人の流れをぼーっと見つめた。

笑顔で感想を言い合ってる女の子たちや、頬が緩んだまま会場から出てくる人を見て、九条くんが恋しくなった。

九条くんは、すごい人だ。

さすがに私もあそこまでぶっ飛んだネタをやる人だとは思わなかったけど、まあ九条くんぽいな、とも思った。

人ってこんなに幸せになれるんだ、なんて思いながら帰路につく。

はやく九条くんに会いたい。

会っていっぱい話したい。

この溢れそうな高揚感と幸福感と、それから、

喉まで出かけて、やっぱりやめた。

この気持ちは、まだ、九条くんには、秘密で。