完全肯定 (ページ6)

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「はいこれ、この前言ってたライブのチケット」

『え、ほんとにくれるの？やった』

「もっと知ってほしいから、僕のこと」

『確かに私、九条くんのこと全然知らない』

「別になんでも答えるで？」

『なんでも？』

「うん、なんでも」

『え、えっと、じゃあ、休日は何してますか？』

「ネタ作りです」

『じゃあー、身長は？』

「184」

『えーっと、じゃあ出身は？』

「滋賀」

『あー、じゃあ、』

「交代しよ」

『わかった』

「彼氏は？」

『え、かれし！？』

「かれし」

『いません。』

「今までに付き合った人数は？」

『それ言わなきゃだめ？』

「僕ちゃんと答えたしなあ」

『ぜ、ゼロ』

「え、ゼロ？」

「へー、ゼロなんや」

『それがなにか？』

「いやー？なんも？」

『もういい！帰った帰った』

九条くんの背中を押すようにして玄関まで誘導する。

九条くんは「えーー」なんて言って靴を履き始めた。

『また来てね、』

「うん」

「あ、そうや、明日学校？」

『うん』

「もう一歩、前、来て」

『うん？』

一歩前に出ると、玄関の段差でいつもより目線が近くなった。

やばい、顔、近い。

『痛っ』

首に手を回されたと思ったら急に右手で首をつねられた。

『え、なに、どうしたの』

「痛かった？ごめん」

『いや痛かったのもあるけど』

「じゃあまた連絡するわ」

「おやすみ」

『え、ちょ、』

私の頭の中のクエスチョンマークを全て無視して家を出て行く。

なんだ、何が起こったんだ、

鏡でつねられた所を見てみると、赤い痣ができていた。

一体何を考えているんだ、あの人は。

もうこれは本人に聞くしか他はないと思い、急いでスマホを取り出す。

ㅤㅤㅤㅤㅤねえ、さっきのなに?

ㅤㅤㅤㅤ隠さずに大学行ってな

ㅤㅤㅤㅤえ、なんで?

ㅤㅤㅤㅤおやすみ

ㅤㅤㅤㅤねえ!!!!!!

はあ〜〜〜と深いため息をついてベッドに寝転ぶ。

ダメだ、九条くんの思考がわからない。

あんな謎人間は初めてだ。

私が手に負える人間じゃないのかもしれない。

疲れきった頭を休めるようにして、私は深い眠りについた。