完全肯定 (ページ3)

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「ごめん、急に」

ソファに並んで座りながら背中を摩り続けて約1時間。

落ち着いたのか九条くんが口を開いた。

『こういう日も必要だよ』

『ご飯食べてく？』

「いや、帰るわ」

「ネタ作りたくなった」

『それは良かった』

「今度おっきいライブあるから見に来てや」

『え、いいの！？行く！絶対行く！』

私のテンションの上がりようを見て九条くんはまたくしゃっと笑った。

「また来てええ？」

『うん、いつでも』

「じゃあ、スマホ」

『？』

「スマホ出して」

九条くんにスマホを差し出すと手早く操作される。

「はい、絶対出てな」

スマホを見ると連絡先に"九条"という名前が追加されていた。

『う、うん、ありがとう』

『あー、傘。持ってって』

「え、もう」

「いや、持ってくわ。ありがとう」

『気をつけてね』

「うん」

玄関まで見送ると、九条くんはなぜかじっと私を見つめた。

『？なに？』

「なんも」

「またくる」

ドアを開けて出て行く九条くんの後ろ姿を見て、なんだか寂しく感じた。

1人でソファに戻り、ぼーっと九条くんのことを考える。

あ、そういえばもう雨止んでたのになんで傘持ってったんだろ。