三途の嫁、死んだってよ【東リべ】 (ページ4)

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灰色の無機質な廊下に、彼女のピンクだけが映えていて、やけに不気味だった。

情報が、頭のなかで処理出来ない。いや、出来るわけがない。

彼女は、死んだ。

その冷たくなった身体も、虚ろになってしまった瞳も、この目で見た筈だ。そうだろ？灰谷蘭。

そういえば、この廊下には水溜まりはあるけれど、降ってくる雨を凌ぐためにちゃんと天井がついている。

それなのに、どうして彼女はずぶ濡れなんだろう。

背筋に冷たいものがはしる。慌てて触れてみると、雨粒が背中を伝っただけだった。

…ガキみたいにビビってた俺が馬鹿みてぇ。

「あ～、前流行ってた死んじゃいましたドッキリってトコ？」

『…蘭ちゃん』

「いや、かなり手ぇ込んでて怖ぇーんだけど」

『あのさ、私さ、』

『死んじゃった…』

ボロボロ涙をこぼしながら、彼女はそう言った。

だから解ってしまった。

彼女がずぶ濡れに見えたのは、ただ、彼女が透けていて、うしろの水溜まりと同化して見えたからだってこと。

彼女は、ドッキリなんかじゃなくてもう本当に生きていない、ということに。