雨と涙は正反対 ２

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智くんが海外に行ってから3年が経った



連絡は取ってるけどいつ帰ってくるのかは教えてくれない




「翔くーん、遅刻しちゃうよー？」


出社時間を心配して寝室から声がかかる


寝てなって言ってるのに…



「A、ゆっくり寝てな。行ってきます」



ひょこりとドアから布団で丸くなってるAに声をかけて玄関に急ぐ




ぶぶ、とポケットで震える端末を無視して会社への道のりを足早に歩いた。









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「潤、ごめん。コーヒーお願いできる？」





去年、部長が定年退職した後

奇跡みたいに俺が部長に任命されてからここの部署の評判は前よりぐんと上がったと女社員が言ってたのを聞いたことがある



俺がいる事で会社に良影響ならいいんだけど。



「はい、ブラックです。翔さん最近暗くないですか、大丈夫？」




コトン、と音を立ててカップをデスクに置く潤の顔は心配の色に染まってて 悪い事をしたな と罪悪感が生まれる




「んな事ねーよ？ただちょっと、寝不足が続いててさ」




大きな会議を控えた今の時期に仕事をサボったら後に支障が出るかもしれないから、と説明すると
さすが潤、要領がいいだけあって理解してくれた



けど




「翔さん、体には気を使ってください、ちゃんと！
寝ること、無理しないこと、ご飯を食べること」




失礼な、飯はちゃんと食ってる！




そう言い返したら 威張るな！って怒られた


これじゃどっちが先輩だか…。






ぶぶ、と潤のデスクの方からバイブ音がしてそそくさとデスクに戻っていく後ろ姿を見て
そういえば俺も来てたなぁ、とポケットに手を突っ込んだ









タップして画面を見た時






時が止まったみたいに俺の思考回路はすべてショートした。









“翔くん、帰ってきたよ。


夜、空いてたら相葉ちゃんのカフェで”




宛先なんて見なくてもわかる




ずっと想っていた、俺の想い人。







“了解です”



短い文を打ち込んで勢いよく送信すると頰が緩むのがわかる






「おかえり」





誰にも拾われない程度の声で呟いた




「翔さん何笑ってんすか」







潤のちょっと引いた顔は……





見なかったことにした。









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