21番 ページ22
『……わ…ぁ…』
エーミールさんの部屋は、壁一面、扉をのぞいて全て本棚で埋め尽くされていた。
360度本、本、本、本。
まるで小さな図書館だ。
真ん中には丸いテーブルに、木製の椅子が四つほどあった。
座って座って、と言われ、大人しく席の一つにつく。
em「さて……一番手っ取り早いのは絵本や小説の読み聞かせでしょうか…。えーと、児童文学は……」
エーミールさんは本棚を漁り始めた。
em「あ、あったあった。これやこれ。」
エーミールさんが引っ張り出したのは一冊の本。
表紙に蝶の絵が描いてある、他の本と比べれば薄めの本だ。
em「ひらがなの読み書きは？」
『少し読めますが……書きは…』
em「よし、書きの練習は後にするとして、まずはこの本読みましょう！。これは「少年の日の思い出」ですね……」
『しょうねんのひのおもいで、』
一文字づつなぞってゆく。
その本の漢字には、全て手書きで読みがひらがなで横に書いてあった。
一度、誰かに教えたことがあるのだろうか。
エーミールさんは音読を始めた。
ー〈僕〉は昆虫採集に夢中だ。
ある日〈僕〉は珍しい〈コムラサキ〉を捕まえ、近くに住む〈エーミール〉という少年に自慢する。
しかし、珍しい蝶だが標本の作り方が良く無いと言ってきて、プライドを傷つけられた〈僕〉はもう2度と〈エーミール〉に自分のコレクションを見せないと誓う。
『………〈エーミール〉…？』
em「ふふ、名前が同じだけですよ。」
白銀色の瞳が、どこか懐かしげに揺らいだ。
微笑ましい、昔を思い出すように。
エーミールさんは続きを読んだ。
2年後、〈エーミール〉が珍しい〈クジャクヤママユ〉をゲットしたと話題になる。
〈僕〉は、あんまり美しい〈クジャクヤママユ〉を盗んでしまった。
メイドに遭遇した〈僕〉は慌ててポケットに〈クジャクヤママユ〉を突っ込んだ。
急いで引き返し戻そうとした時には手遅れ。
ポケットに入れた〈クジャクヤママユ〉はボロボロに、修復不可能な状態まで壊れてしまった。
家に帰った〈僕〉は母親に罪を告白する。
母親に言われ、〈僕〉は〈エーミール〉に謝罪をしにいく。そして、
em「「そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな」」
そう冷ややかに軽蔑された〈僕〉は
帰宅すると、自分の採集した蝶や蛾の標本を全て指で粉々にした。
エーミールさんと〈エーミール〉
どこか重なるところを感じた。
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狐(プロフ) - 投稿楽しみです！頑張ってください！ (2020年1月30日 20時) (
レス) id: 96285177cb (このIDを非表示/違反報告)
紫陽花 - 面白いです！元から一緒にいるのではなく、捕虜という形で打ち解けていくっていう設定がもう好きです！頑張って下さい！ (2020年1月30日 7時) (レス) id: d538ff0020 (このIDを非表示/違反報告)
雫 - 続き楽しみにしてます (2020年1月30日 2時) (レス) id: 65016211cf (このIDを非表示/違反報告)
ツナ - 初コメ失礼します…喰種とwrwrdの組み合わせって天才ですか？神ですか？最高です頑張ってください！ (2020年1月28日 21時) (レス) id: 0734d8027b (このIDを非表示/違反報告)
アメノエナ - 面白かったど〜！応援してます頑張ってください！ (2020年1月28日 16時) (レス) id: ade8211ab6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：某豆氏 | 作成日時：2020年1月18日 23時
