宿儺が愛した女性【呪術廻戦】

九 ページ11

宿儺side


足がふらつく。

目の前にある、喉を一突きされた愛しい者の亡骸を見て。

感情が無くなる。

こいつを殺したのは誰だ。


人間としての温もりが感じられなくなったAを必死に抱く。
生きていた時の柔らかさも消え、顔には死相が浮かび上がってきている。

「A…どうしてこうなった………」

返事は無い。
ぎゅっと、更に力を込めて抱く。

「何故だ……何故こうなる…」

ふと、髪に目がいく。
昨日あげた簪が、妖々しく輝いていた。
主人は亡くなっているのに大層な物だな、と鼻で笑う。
簪を髪から抜いて、Aを姫抱きにする。

歩を進めると、前方から編笠の男が来た。
すれ違うと、ぴりぴりとした嫌悪感を覚える。

「……両面宿儺、お前を祓う。否、封印する」

呪術師か…。
俺は今最高に苛ついている。
怒っている。

「…ｹﾋｯ」

こいつか。
こいつがAを殺したのか。

「………存命したいのならば薦めはせん」
「お前を祓う。否、封印する」

取って付けたように同じ台詞を復唱する。

……気配を消しているのか。
何も感じぬ。
並では無いな。
厄介だ、呪術師というものは。

Aを草の上に置き、編笠の男に向き直る。



「殺せるのなら、殺してみろ！」

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