急襲 ページ36
「そうじゃ…。」
カーディナルの目元が赤く染められている。
「この世界に、今外の世界から来たものがおる。イレギュラーユニット、というやつじゃな。その者ならきっと…きっと共に戦ってくれるはず。」
「分かりました。」
「では、行くがよい。」
重く、荘厳な雰囲気を纏う大きな扉の前に私は立った。
「最後に…この力。おぬしの負担はとてつもないじゃろうが、授けておこう。本当に窮地に陥った時のみ使うのがよい。」
「ありがとう…！」
鏡華龍転剣の剣先が白く瞬くのと同時に、扉の向こうへと身体を進ませた。
「これが、私の知る全てよ。」
ユージオに、私は私の知る全てを教えた。
「ワールドエンドオールターがそんな物だったなんて…それに、アドミニストレータに抗おうとしてる人が他にもいたってこと…今更だけど、信じられる話じゃないよ。」
「それでも…！」
「信じてるよ。僕、思ったんだ。多分リザレクも同じこと思ってるんだと思うけど、キリトが外の世界から来た…それこそがベクタの迷い子ってことなんだよね。」
「だと思う…。」
「話してくれてありがとう。」
翡翠色の瞳が燦然としている。もう言わずとも伝わっただろう。私の願うこと。それは。
「僕はアリスを…外の世界でも守ってみせるよ。」
「ありがとう、ユージオ。その為にも、今はワールドエンドオールターに辿り着かなきゃだよね。」
「そうだね。そろそろ休憩も終わる。気合い入れ直そう！」
「うん！」
私とユージオは、今も休んでいる雪鳴の元へ向かった。全員が飛竜にまたがり、準備完了したその時。
「俺は十侯、ジャイアント族のシグロシグ。お前ら騎士を殺しにきた！」
低い声で、ジャイアント族の長は威嚇した。それに反応したのは、緑髪の青年だ。
「私が行こう。エントキア、いくぞ。」
続いて、水色の髪の青年も応じる。
「ネギオ…任せろ！アリス先生、よろしく頼むぜ！」
「この数を二人では無茶です！」
アリスの言う通り。ジャイアント族自体が、かなり戦闘力が高い。一人倒すにもかなりの労力を必要とするのにもかかわらず、相手の軍勢はおよそ五千。勝利は不可能に近い。
「大丈夫です、アリス様。私達は三人ではありませんから。」
「そうですよ。じゃあ、はやく飛んでください！」
苦しそうな顔で、ファナティオは飛竜の翼をはためかせた。
「総員、前進準備！前進！！！」
緑と水色の閃きが、赤黒か染め上げられた地面にとり残されていった。
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作成日時：2019年11月23日 12時
