衝撃の根源 ページ27
拙者の剣は、隙だらけのあやつの右腕を完全に捉えていた。あやつは視界が充分でなく、かなり反応が遅れている。
「はぁぁああっ！」
グッ
剣を振り下ろそうとしたその刹那。突如、身体が一切動かなくなってしまったのだ。
「ゔ…っ…。」
声すらはっきり出すことが出来ない。首すら動かないため、どうにか目線だけを動かして原因を探る。
「ヴェイスはん。助けてくれたんか。」
「礼は要らん…帰るぞ。」
綺麗な白の長い髪を翻して、動きを止めたと思われる男は去って行った。
「ほなな、リュウはん。また遊びに行かしてもらうわ。」
ヴェイスに続くように、あやつも去って行った。あやつ、名をシュデン・ラン・ディルス…。次は逃さん。
数分前。
後方で一人、レンリは補給部隊の手助けなどを行なっていた。数日間に渡る戦いにより、想像より雙翼刃の天命が減少した為、今日だけ後方に下げられていたのだ。
「天命…どれくらい回復したかな。」
愛着の湧いた神器が弱っているとなると、やはりすぐに気にかけてしまう。レンリは、雙翼刃に人差し指をかざしてSを描いた。不思議な軽い音と共に、ステイシアの窓が開かれる。
「天命は…あっ、さっきより回復してる！よかった…これでまた前線に戻れそうだね。」
レンリの声に応えるように、雙翼刃の刃先は瞬いた。少し気も楽になったところで、もう一度補給部隊の仕事をこなそうとしたその時。
ドォオン！
突如。空間の衝撃がレンリを襲った。空気の揺れ方からして前方十数キロルは離れている。幸い、周囲に対した損害は無いようだ。驚いて尻餅をつく兵士や、空を見上げざわつく補給部隊の方がいた程度であり、驚きで何か心身に支障をきたす人も居なかった。
「みなさん落ち着いてください！」
黙々と作業をしていた為、急な大声で少し喉に違和感を覚えてしまったが構わず叫び続けた。
「僕は整合騎士、レンリ・シンセシス・トゥエニセブンです！先程の衝撃の根源は、僕が確認しに行くので心配しないで下さい！」
人差し指と親指を口の端に加え、強く息を吹く。
ピィー！
レンリの出した高い音に、風縫はすぐに応える。風縫は一瞬で数キロルを超え、レンリの元に飛来した。
「風縫。僕をあそこまで連れて行ってくれ。」
グウゥ…
「ありがとう。行くよ…飛べっ！」
飛べ、の一言と共にレンリを乗せた風縫は空へ舞った。目的地は巨大な衝撃の根源。
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作成日時：2019年11月23日 12時
