穿たれる剣 ページ24
「皇帝さんよ…そろそろ決着つけねえか？」
「ふむ。そろそろ余興も飽きたからな。」
「一太刀で決めるぞ…！」
時穿剣を握り、皇帝ベクタに対し構える。ベクタも俺に向け、剣を構えた。
「斬！」
俺は迷わず空を斬った。十分前。丁度ベクタがいた所を全て計算し尽くして。
「何だと…？」
突然、皇帝ベクタの胸が大きく裂けた。そこからは血がとめどなく溢れ、確実に殺したという確かな手応えを感じた。俺のこの剣で斬ったのだ。
「何をした…そうか……お前が整合騎士の長か。時を司るその剣…厄介だな…そうだ。その剣だけでも壊してやろう…アリスを捕まえるためにお前は邪魔だ！」
突如。皇帝ベクタから膨大な量の闇が溢れ出した。それらは昏く、醜い何かを持っていた。見ているだけで不安になるような。そんな闇が
時穿剣に纏わりついて離れない。
「クソッ！」
俺は時穿剣を振り回し、どうにか闇を払い除けようとした。だが、その努力も虚しいものと成り果ててしまった。早く時穿剣から離れろ。その願いとは逆に、闇はどんどん時穿剣を蝕んでいく。天命が減っていくごとに、俺の愛剣はキリキリと音を立てる。
–––やめてくれ。やめてくれ。俺の愛剣を。やめてくれ。早くやめろ。やめろ。
「やめろ…やめろっ。やめろやめろやめろ！！！」
パリンッ
俺の雄叫びとほぼ同時に、時穿剣の天命は無慈悲に尽きた。皇帝ベクタはいつのまにか死に消え、残されたのは俺と皇帝ベクタが座っていた玉座だけだった。ダークテリトリーの赤みがかった空から冷たい雨が降り始める。星咬に託した言葉は、もう人界軍の…特にアリスの嬢ちゃんに届いただろうか。
「守れなかった…すまない…これまでありがとな。時穿剣…。」
「独り言…か。随分余裕であるな。整合騎士長ベルクーリ。」
ダークテリトリーにしては珍しい、和風な服を纏った青年が俺の前に現れた。髪は長く、黒い。目つきがかなり鋭く、額にはかなり長めの白い鉢巻のようなものをつけて後ろでなびかせている。
「名前は何だ。」
「拙者の名前はリュウ。暗黒剣士団の端くれである。」
「生憎だが、暗黒剣士団は壊滅させちまった。すまねぇな。」
「いや、先ほども申したであろう。拙者は暗黒剣士団の端くれ。暗黒剣士団に所属はしてはいるが、顔はほとんど出していない。それどころか、反旗を翻そうとしていた。」
「そりゃまた何でだ。」
「少し長くなるが、なるべく簡潔に説明する。人界の陣地に入れてはもらえぬか。」
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作成日時：2019年11月23日 12時
