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この場を収めるために彼に一言謝ることは簡単だ。けれど、それをしてしまったらきっと何も変わらない。今まで通りこの人に支配されて、三ツ谷くんやエリカに心配をかけさせる。自分を心配してくれている人たちのためにも、自分のためにも謝るわけには絶対にいかなかった。
私が歯向かうことが相当許せないのか、私の言葉を聞いた駿は怖いくらいの笑顔だった表情を一瞬にして崩し、冷めた顔をしながらゆっくりと立ち上がった。
コツ、コツ、コツ
小さな足音を立てて私に歩み寄ってくる。
グッと手の平に爪が食い込むくらいに拳を握りしめ、恐怖心を表に出さないように私は必死だった。
私と靴一つ分の距離まで詰めてくると駿はあたりを見回して叫んだ。
「おい、三ツ谷ぁ!いるんだろ!出てこい!」
「っ、何言って…」
「お前がそんな強気で俺に歯向かうなんておかしいじゃん。いつも俺目の前にするとビクビクしてたお前がさ」
「っ、何言ってんのよ。三ツ谷くんがここにいるわけないでしょ!」
「嘘言ってんじゃねーよ」
「嘘じゃない!わ、私は駿と話に来たって言ってるでしょ!」
この人が何を考えてるのかさっぱりわからなかった。私が三ツ谷くんを連れてきている?もし連れてきているなら最初っから一人でこんな怖いところに踏み込んでなんかない。
「話?さっきからお前何言ってんの?俺とお前が何を話すの?」
「っだから!私は駿と別れにきたの!」
「………」
「これ以上続けられるわけがないでしょ!」
「………」
「もう駿と関わりたくない!!終わりにした、」
終わりにしたい。その言葉は続かなかった。
気づいたらお腹付近に鋭い痛みが走り私は冷たいコンクリートに転がった。
…信じられない。女の腹を平気な顔して本気で蹴る人なんて、きっとこの人くらいだと思う。
「ッゴホッ!ゲホゲホッ」
「次同じセリフ言ってみな。今度は本気で殺すぞ」
彼の脅し文句を聞きながらこの人には何を言っても無理かもしれないと思った。体が震え始める。本当に殺されるかもしれない。そう思ったら自分が馬鹿なことをしてるんだってことにやっと気づいた。
佐野が私に呆れて怒るのも今となったら理解できた。
「謝れよ」
「っ…」
「ほら、早く謝れ。そんで俺以外の男と二度と口効かないってこの場で約束しろ」
「………っ、そんな約束、」
「何?もう一回蹴り入れられたいの?」
倒れ込む私の胸ぐらを掴んで駿はそう言った。
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knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!変換ミスしていましたね…読みづらく申し訳ございません。修正させていただきました!他も確認次第修正していきます。こんな小説にもったいないお言葉本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 6ページなのですが、無償に ではなく 無性に ではないかなと、、、 余談ですが、お話好きなので完結まで着いていく所存です! (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年8月2日 2時