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あれから廊下で彼女を見かけたり、校庭で彼女のクラスが体育をやっていたりすると、なんとなくオレの視線はそちらに向いていたが会話を交わしたことはなかった。それからしばらく経っての今日、周りが棒立ちしている中強い雨に打たれながら彼女は川に入って行った。その姿は周りの目や反感など全く気にせず、転んだ男性生徒を助けに行ったあの日の後ろ姿と同じだった。
全身びしょ濡れになった彼女が岸に無事上がってきた時、右手には首輪のついた犬が抱えられていた。
この雨で、激しい流れの川の中一匹の犬を救った彼女はもうその場の誰もが認めるヒーローだった。
男であるオレやマイキー、他の野次馬の連中を差し置いて一歩間違えば彼女の命にも関わっていたかもしれないと言うのに彼女は勇敢に一匹の犬を救った。
なんだか恥ずかしくなった。棒立ちしてただ一人で犬を救った彼女を見つめることしかできなかった自分と、彼女の差というものに無性に居た堪れない気持ちになる。
面食らってしまって声が出ない。岸へ上がった彼女に何も言えない。手を差し伸ばすことさえできない。
それは未だにオレと同じように面食らっているマイキーも同様だった。岸に上がってきた彼女は一度抱えていた犬を岸に降ろすと、びしょ濡れになったセーラー服を雑巾絞りをして水気を切っていた。そんな彼女にたまたま近くを通っただろうおっさんは駆け寄りながら大声で怒鳴り散らす。
「馬鹿野郎！！ガキがあぶねー真似してんじゃねーぞ！！！」
彼女の至近距離までいったおっさんは随分ときつい言い方で彼女にそう言った。おっさんの言うことはもっともだ。あんな状態の川に飛び込むなんて無謀もいいところだ。無事だったからまだいいものの…。
けれど当の彼女といえば、はぁ、はぁと荒い呼吸を整えた後そのおっさんにキリッとした鋭い視線を向けると「命が関わってるのに子供とか大人とか関係ありません！」そう怒鳴り返した。そして、川に飛び込む前に投げ捨てた鞄の中に、脱ぎ捨てた靴や衣服をぶち込むと岸に下ろした犬を抱えそのまま傘も差さずに走り去って行った。
「………あの制服、三ツ谷知り合いじゃねぇの？」
「え？…あ、ああ…同じ学年だけど」
「名前は？」
「え？」
「あの女の名前」
「？…AA…」
「……ふーん、AAね」
今思えば人に興味がなく無関心なマイキーが、彼女に興味を持ったのはこの時だったのかもしれない。
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knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます！変換ミスしていましたね…読みづらく申し訳ございません。修正させていただきました！他も確認次第修正していきます。こんな小説にもったいないお言葉本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月2日 18時) (
レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 6ページなのですが、無償に ではなく 無性に ではないかなと、、、 余談ですが、お話好きなので完結まで着いていく所存です！ (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柴咲華 | 作成日時：2021年8月2日 2時
