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「ここって…」
「オレの好きなどら焼き屋」
「こいよ」そう言って佐野はまた私の手をとり、目の前にある長年の歴史を物語る年季の入った外観のどら焼き屋さんへと入って行った。
中に入ると、どら焼きの生地の甘い匂いが広がった。どうやらここのお店は、入り口にカウンターがありそこに商品を並べ奥は住居のようだった。軽く覗いてみると、畳の部屋にレトロなテーブルが1つとテレビや茶箪笥などが見えた。入り口のカウンターに座っているのは年老いた男性で、佐野はお爺さんに「よう、じいさん。元気だったかよ」なんて軽々しい挨拶を口にした。そんな佐野に、お爺さんもお爺さんで「よう、小僧。久しぶりだな」なんて言いながら、2人は古くからの付き合いがあるかのような会話を交わした。
「お…なんだよ小僧、そこのお嬢さんはお前のコレか?」
「え!?いや、違います!」
ニヤリと笑って小指を立てるお爺さんに慌てて全力否定をする。佐野はジーッとこっちを睨んでから「そのうちそうなるかもしれねぇ」なんてお爺さんに向かって笑っていた。
なんねーよ!と口にしようとしたけれど、先程の佐野の「お前に興味がある」発言を思い出してしまい、なんとなくその佐野の冗談だか本気だかわからない言葉に否定もできず、私は黙り込んだ。
「奥上がるぞ。どら焼き食いたい」
「それが目的できたんだろ?勝手に持ってって食ったらいい」
お爺さんがそう言うと佐野は全く遠慮なんかせずに、「コレとコレー」なんてご機嫌にカウンターに並ぶどら焼きを2つ手に持った。「お前は?」なんて言われたけれど、いや…もらえるか!
「ちょっと、佐野!失礼じゃん」
「あ?いいんだよ。いつもこうだしこの爺さんとは
「いいわけあるか!友達って言ったって…!あ、あの…お爺さんごめんなさい。おいくらですか?」
どこまでもマイペースな佐野の代わりにお爺さんに頭を下げ、佐野が持ったどら焼きのお金を払おうとするとお爺さんは笑って手を振った。
「いいんだよお嬢さん。小僧には少し前から色々と面倒かけててね。この老いぼれが小僧に出来るお返しなんてここのどら焼きを食わせてやることくらいだから」
「え、でも…」
「ほら、お嬢さんも好きなの持っていきな。今飲みもん持ってきてやるから」
そう言ってお爺さんは立ち上がる。
本当にそれでいいのか?なんて思いながら佐野を見れば「だからいいって言ったじゃん」なんて少しむくれた顔を向けてきた。
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knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!変換ミスしていましたね…読みづらく申し訳ございません。修正させていただきました!他も確認次第修正していきます。こんな小説にもったいないお言葉本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 6ページなのですが、無償に ではなく 無性に ではないかなと、、、 余談ですが、お話好きなので完結まで着いていく所存です! (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年8月2日 2時