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Aさんは見ない方がいい。
三ツ谷くんがそう話す間もヤンキー学園ドラマの中で聞いたような音が耳の奥まで届いた。いや、違う。あのドラマの裏側は実は殴っている時の音はキャベツを殴った時の音で表現していると言っていて、へぇー人を殴った時の音ってキャベツを殴った時に近い音なんだ。そんなことを思ったことがあるけれど、実際はそんな可愛らしいものじゃなくもっと鈍くて重い、顔を顰めてしまいそうになる音だった。その音はきっと佐野が殴るか、殴られている音で…。三ツ谷くんの言う私は見ない方がいいとは一体どう言う意味なんだろう。
「っ、佐野は…佐野は大丈夫なの!?」
あくまで小声で一番気になってることを聞く。奪われたままの視界の中で、三ツ谷くんの声や気配から彼の腕にしがみつくようにして聞けば彼は私の頭をぽんぽんと優しく叩いた。
「大丈夫。うちの総長はマジで無敵だから」
三ツ谷くんがそう言った後、倉庫内はシンと静まり返った。何がどうなったかわからない。早くこの目隠しを取りたい衝動に駆られたけれど、取るのが少し怖くなっている。カツカツカツと靴の音を鳴らし不意に自分の目の前に誰かが来たことを理解しまた肩が震えた。突然鉄の匂いと嗅いだことのある柔軟剤の匂いが鼻の奥をくすぐった。あ…この匂い…。
私はこの匂いを知っている。その匂いを持つ人物は、真正面から私の後頭部に手を回して結んでいたリボンをほどき途端に視界が明るくなった。急に入り込んできた光に目を掠めながらもゆっくり開けてみると
「佐、野…?」
顔面に血をつけてはいるものの、至ってピンピンしている佐野がそこにいた。
「悪いなマイキー、入るタイミング失った」
「いーよー別に。思ってたよりも早く片付いたし。それより三ツ谷は仕返ししなくてよかったのかよ」
「…これ見たらする気も失せるだろ」
「ん?まだオレはやってもいいけど?」
「いや、これ以上はやめとけって」
さっきまでの殺伐とした雰囲気はどこに行ったのか呑気にそんなことを話す二人。目の前の佐野を押しのけるようにして目の前の光景を見れば、コンクリートの地面に真っ赤な特攻服を着た人たちが倒れ込んでいた。
「うそ、でしょ……」
「ん?何が?」
「これ、あんたが…佐野が…全部一人で……?」
「そうだけど?」きょとんとした顔で言ったこいつは人間じゃなかった。
佐野万次郎
こいつは、化け物の類だった。
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knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!変換ミスしていましたね…読みづらく申し訳ございません。修正させていただきました!他も確認次第修正していきます。こんな小説にもったいないお言葉本当に嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 6ページなのですが、無償に ではなく 無性に ではないかなと、、、 余談ですが、お話好きなので完結まで着いていく所存です! (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年8月2日 2時