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「あの、三ツ谷くん…だよね?」
机の上いっぱいに広げられた鮮やかな色した布に慣れた手つきで定規とペンを走らせ作業するその背中に申し訳ないと思いつつも声をかける。いい意味でも悪い意味でもこの学校じゃ知らない人はいないほどの有名人である彼と言葉を交わしたのはこれが初めてだった。
「あ…1組のAさん?」
「わかるんだ!さすがだね」
「同級生の顔と名前くらいわかるよ。俺そんなに他人に興味なさそうに見えるか?」
意地悪くそう言った彼は元より垂れている目尻を更に下げながら軽く口角を上げる。あ、噂通り笑うと可愛い。女子の間で一大人気を誇る彼は銀色の短い髪の毛が特徴的で、垂れ目な目からとても柔らかい雰囲気の男の子という印象を受けるも、きつめな角度で剃り上げられた眉毛と左耳に揺れるクロス柄のリングピアスが妙に「ヤンキー感」を醸し出していた。その容姿で、たくさんの裁縫道具に囲まれる彼はこの場に似つかなくて思わず笑みが溢れてしまう。
「おいおいオレは何に笑われてんだ?」
「あ、ごめんなさい。いやなんていうか、似合ってるなって」
「俺みたいな奴が裁縫なんてって思ってる?」
「とんでもない。三ツ谷くんみたいな手先が器用で丁寧な男子って素敵だなって思ってます」
「ハハッ!なんだよそれ」
「あれ?笑うところ?本当なのにな」
「Aさんって男心くすぐるの上手だね」
「あれ?私くすぐっちゃった?」
「だいぶね。まあでもAさんに褒められたら悪い気はしないな」
彼はそういいながら、ふぅーと肩にかけたメジャーを外しながら一息ふいた。雑な動作は一切見せずに、一つ一つの道具を丁寧に並べて片す姿を見て、先生たちは「不良」や「ヤンキー」なんて言葉で括り彼らを外見などで判断してるが、実際話してみたり彼の動作を見てみると本当に裁縫が好きなただの男の子なんだなと思えて少し嬉しくなる。
「人気者のAさんがオレなんかを訪ねてきてくれるのは嬉しいんだけど何か用事だった?」
「あ、作業中にごめんね。邪魔だったらまた後にするけど…今話しても大丈夫かな?」
「あぁ。ちょーど休憩しようと思ってたところなんだ」
「ほんとに!よかった。それじゃ、三ツ谷くんの休憩時間ちょっとお邪魔させてもらっていいかな?」
そう言いながら右手に持つコーラと左手に持つレモンティーを差し出せば、「オレの好みわかってんね」クールに笑って彼は私の右手を軽くした。
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knnk99(プロフ) - 累さん» 累様 嬉しいコメントありがとうございます。佐野くんカッコ良すぎますよね…あんな闇を抱えた男前なんとかしてあげたくなっちゃいますよね笑 のんびり更新ですが気長にこれからもお付き合いいただけましたら幸いです。ありがとうございます! (2021年8月24日 1時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - 作品読ませて頂きました。続編はこれからですが、私もマイキー大好きなので、これからの夢主ちゃんとの絡み楽しみにしています。 (2021年8月21日 17時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!気がつきませんでした( ; ; )修正させていただきました!教えていただき、またお読みいただきとっても嬉しいです!ありがとうございます(^ ^) (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 48ページ 一ヶ所名前変換が出来ていないところありました。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年7月17日 4時