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「……痛かった…よな」
私の左頬に触れ、そう寂しそうな声で言った佐野万次郎の瞳は真っ暗だった。まるで大切なものを撫でるかのように私の頬をそっと優しく撫でながら視線を落とす彼はめちゃめちゃ整った顔をしているけれど、その大きな瞳は目の前にいる私すらも映さないぐらい漆黒で何故だかほぼ見知らぬ彼に対して闇を感じてしまった。
「っ、自分で…したことだから」
「…だけど痛かったろ」
そう言って彼は私に貼ってある冷えピタを剥がし近くに置いてあったゴミ箱に投げ捨て、新しい箱に手を伸ばした。まだ十分に冷えていた冷えピタを捨てたもんだから、勿体ない!なんて場違いなことを思ったけれど、ゴミ箱に捨てられた使用済みのそれらの数々を見て驚いた。そして驚いているうちにまた新しい冷えピタが頬に貼られ、冷たい感触が再び私の頬全体を包み込んでいく。
「…もしかして、ずっと貼り替えてくれてたの?」
「…お前女だろ。顔にアザでも残ったら大変じゃん」
「っ、でもあれは、私が…」
「助けようと思ってたはずなのにオレがお前を殴っちまった」
ごめんな。佐野万次郎はそう言って俯いた。一度しか会ったことない私相手に、私が意識を失ってる間ずっとこうして冷えピタを取り替えてくれていたのかと思うと胸がトクンと高鳴ったのを感じた。まだ十分に効力があるはずの冷えピタを早い段階で何度も剥がしては新しいものを貼り、剥がしては新しいものを貼り……それを繰り返していた彼を想像すると言葉にはできないけれど心臓をなんだかギュッと掴まれたよう感覚だった。1枚の冷えピタで数時間は軽く役目を果たせるというのに一体彼は何度この作業を繰り返したのだろうか。ほぼ見ず知らずの私の将来の顔のアザなんかを心配して…。そもそもの話だが、彼は現実私を助けてくれていた。きっとあの場に彼らがいなければ、私は今頃どうなっていたかわからない。あの時の状況を思い出し考えただけでも恐怖で今でも体は震えた。だから、あの時ああして私と駿の間に入ってくれたことに対し私は彼に感謝の気持ちしかないのだ。彼が謝るべきことは何も…ない。
「助けて、もらったよ」
「………」
「二度と会うと思わなかったあなたに、まさか本当に助けてもらえるなんて」
「……オレは言ったことは必ず守る男だ」
「うん、本当にそうだった。だから謝らないでほしい。私が勝手に、あなたと駿…あ、彼の間に入り込んだだけだから」
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knnk99(プロフ) - 累さん» 累様 嬉しいコメントありがとうございます。佐野くんカッコ良すぎますよね…あんな闇を抱えた男前なんとかしてあげたくなっちゃいますよね笑 のんびり更新ですが気長にこれからもお付き合いいただけましたら幸いです。ありがとうございます! (2021年8月24日 1時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - 作品読ませて頂きました。続編はこれからですが、私もマイキー大好きなので、これからの夢主ちゃんとの絡み楽しみにしています。 (2021年8月21日 17時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!気がつきませんでした( ; ; )修正させていただきました!教えていただき、またお読みいただきとっても嬉しいです!ありがとうございます(^ ^) (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 48ページ 一ヶ所名前変換が出来ていないところありました。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年7月17日 4時