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"佐野万次郎"
そう名乗った彼のことを私は一切知らない。
私の生まれは元々今いるこの公園がある渋谷区だけど、小学校でも今通う中学でも私は佐野万次郎という名前の少年を知らない。顔を見たって、正直こんな整った顔の少年を忘れるはずがない。髪の毛だって金髪だけだったら粋がった不良が多いこの街では珍しくないけど、セルフで染めたような汚い金色ではなく、髪の痛みも知らないような、最初からその色であったかのような綺麗な眩しい綺麗な金色の髪だった。
正直彼は、目を惹く要素がある容姿をしていた。こんな子一度会っていたら絶対忘れない。だからわかる。私は彼を知らない。
何度も言うように初対面で私は彼に会うのは初めてだった。けれど彼は私を知っているといい、そして本当に名前を知っていた。自分が知らない相手が自分を知っている。その事実は怖いとかそういう感情ではない。少しの気持ち悪さを私の胸にじわりと落としていった。
咄嗟にブランコから立ち上がり彼から離れるように距離を取る。先ほど触れられ心地よさを感じていた頬ですら気持ち悪く感じ、思わず自分の手で彼の冷たい手の温度を上書きするかのように覆った。
「…なんで、私の名前……」
「とにかく、なんかあったら連絡してこい」
佐野万次郎という少年は、そのまま足の爪先を使って公園の地面に何かを書き始めた。呆然としながらもその行動を見ていると書かれた数字の羅列はどう見ても携帯電話の番号。連絡してこいという言葉の後にこの行為、あーこの少年の携帯番号か。どこか他人事のようにそれを見つめる。
「オレは絶対、お前を助けられるよ。だから頼ってこい」
またな、A。そう言って彼はそのまま、ブランコの前の柵を軽々と飛び越え私に背を向け去っていく。
残されたのは、彼が地面に書いた歪な数字の羅列と、まだほのかにひんやりとする頬の感触だけだった。
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knnk99(プロフ) - 累さん» 累様 嬉しいコメントありがとうございます。佐野くんカッコ良すぎますよね…あんな闇を抱えた男前なんとかしてあげたくなっちゃいますよね笑 のんびり更新ですが気長にこれからもお付き合いいただけましたら幸いです。ありがとうございます! (2021年8月24日 1時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - 作品読ませて頂きました。続編はこれからですが、私もマイキー大好きなので、これからの夢主ちゃんとの絡み楽しみにしています。 (2021年8月21日 17時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!気がつきませんでした( ; ; )修正させていただきました!教えていただき、またお読みいただきとっても嬉しいです!ありがとうございます(^ ^) (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 48ページ 一ヶ所名前変換が出来ていないところありました。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年7月17日 4時