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突然離された手と急に吸い込んだ空気に苦しくて立っていられなくなった私は、そのまま地面に倒れそうになりながらも視界に入る厳つさMAXの彼に思考をめぐらせた。流れるような金色の辮髪に左の側頭部に描かれた龍の刺青の彼に見覚えは全くなかった。誰だろう、そう思いながらも体は自由が効かなくて立っていられない。足がもつれ、本格的に体が倒れかかった。
ポスッ
けれど、倒れかけた私の体が倒れることはなかった。急に暖かい何かが私を包み込む。柔軟剤のいい匂いが鼻先をくすぐった。心地よい温度と匂い。訳もわからず、けれどさっきまで殺されかけてたことを思い返すと今私はとても安心感に包まれていた。助かった、そう思った。
「…大丈夫、じゃなさそうだな」
「ッゲホ!…ッゲホゲホッ……!
むせて何も言葉にならない私をしっかり抱き止め背中を優しく摩ってくれる。誰かとまるで抱き合うような体制のまま、呼吸を必死に整えようと息を吸った。まだ完全に力が入らず誰かに体を預けた状態のまま目の前を見れば先程の辮髪の男の人が、尻餅を付いている駿に一歩ずつ近づいていった。その駿の唇の端には赤黒い血が滲んでおり、辮髪の彼がきっと駿を殴り私から引き剥がし助けてくれたんだと理解する。けれど一つわからないのは私を抱き止め、リズム良く私の背中を叩いてくれるこの体温の正体だけだった。
「こいつが三ツ谷の言ってたやつ?」
「ああ、こいつで間違いないよケンちん」
「どうするよ、マイキー。とりあえずノシとく?」
…三ツ谷?………三ツ谷って三ツ谷くんのこと?この人たちは三ツ谷くんの知り合い?
ケンちんってだれだ?マイキーってだれだ?
頭の中はハテナで溢れ、あーやばい、状況が理解できなさすぎる。
「A……ちょっと待てるか?」
「ッゴホッ、あ、あなたは……」
「佐野万次郎。一回言ったろ、覚えとけよ」
そっと肩に手を置かれもたれかかっていた体を離すと、私を抱き止めてくれていた彼はゆっくりその場に私を座らせた。そのあと腕を通さずにマントのように羽織っていた制服の上着を私にかけ、私と目線を合わせるようにしゃがみこみポンと頭に手を置いて呆れたように笑う彼を私は知っていた。
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「俺は絶対、お前を助けられるよ。頼ってこい」
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以前公園で会ったことがある、2度と会うことはないと思っていた美しい金色の髪が似合う少年だった。
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knnk99(プロフ) - 累さん» 累様 嬉しいコメントありがとうございます。佐野くんカッコ良すぎますよね…あんな闇を抱えた男前なんとかしてあげたくなっちゃいますよね笑 のんびり更新ですが気長にこれからもお付き合いいただけましたら幸いです。ありがとうございます! (2021年8月24日 1時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - 作品読ませて頂きました。続編はこれからですが、私もマイキー大好きなので、これからの夢主ちゃんとの絡み楽しみにしています。 (2021年8月21日 17時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!気がつきませんでした( ; ; )修正させていただきました!教えていただき、またお読みいただきとっても嬉しいです!ありがとうございます(^ ^) (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 48ページ 一ヶ所名前変換が出来ていないところありました。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年7月17日 4時