Screw Driver【佐野万次郎】

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心配してくれた三ツ谷くんには申し訳ないけれど、校内で彼と話をするのは大変リスキーな行為だった。彼に裁縫を教わっていた頃、毎日一緒に帰ったり廊下で会えば話をしたりして、それに対して変な噂が立って駿は変わった。そのため駿がいないとしても2人で話してる姿を誰かに見られ、変に駿の耳に届いてしまうことが私は何より怖かった。まだ何か言いたそうでけれど言えない三ツ谷くんに、ありがとうだけを言い私は足早にその場を去った。



その日の放課後、にこやかな駿に「帰ろう」と言われ嘘をつく。先生に授業で使う資料まとめを頼まれたから帰れないと。実際駿と帰るのを断る口実として先生に無理矢理仕事をもらっていたため嘘ではないのだが、三ツ谷くんと話をしてしまった事実をもし彼に知られていたらと思うと怖くて嘘をつかざる終えなかった。断れば駿は一瞬にして笑顔を崩し「男じゃないよな」と鋭い目つきで詰めよってきたが、全力否定を長々とすれば渋々だけど帰って行った。




トントン、パチっ

トントン、パチっ


駿とのことをどうするか。それだけを考えながら仕事をこなしていく。たまに考えすぎて手が止まるが我に帰って、数枚のプリント用紙を手に取り机で角を整えホチキスで止める。また整え止める。淡々とその作業を繰り返していく。さっさとやればすぐに終わる作業を心ここに在らずの状態でやっていたため「まだ終わらないのか」なんて先生に呆れた声をかけられたところでもう随分と時間が経っていることに気が付き、慌てて仕事を終わらせ職員室まで届けに行く。


「自分でやりたいって言った割には随分時間かかったな」


「ははは、すいません…これ、終わりました」


「おー、お疲れさん」


「それじゃ失礼します」


「あ、まてA」


「？」



帰ろうとしたところを呼び止められた声に振り返る。「ほらよ」と何かを差し出されたため、慌てて両手を表にし小指同士をぴたりとくっつけ器のようにして出せばそこに落とされたのはいちごの飴が２つだった。


「…いつもお菓子持ってたら没収するくせに」


「俺は先生だからいいんだよ」


「えー理不尽」


「他の生徒には内緒だぞ」


爽やかに笑って先生は気をつけて帰れよーなんて手を振って私を送り出した。握られた２つの飴は、いちごにふざけた顔の絵が書いてある包み紙で、そのふざけた顔がしょうもなさすぎてなんだか笑いが込み上げてくる。可愛くもなんともない絵だったけどちょっぴりその絵に感謝した。

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