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「Aさん、どう?進んでる?」
しっかり声変わりしきった男子の低い声が聴こえ、ミシンと布に眼球ガン開きで睨めっこしていた私は声の方へと顔を向ける。そこにはひょっこり後ろから顔を覗かせ、作業の進み具合と私の様子を確認しにきてくれた三ツ谷くんがいた。
「わ!先生!」
「ハハっ。だいぶその呼び方にも慣れてきちまったな」
あの日から毎日私は"先生"こと三ツ谷くんから、放課後や彼の部活動の時間に家庭科室の一角を借りて母へのプレゼント作りのため、それはもう丁寧すぎるくらいな指導を受けていた。正味1週間足らずの時間だったけど私の我儘に時間を割ききっちり付き合ってくれ、尚且つ教え方が大変わかりやすく上手な彼のおかげで予定してたよりも作業は捗り、プレゼント完成は目前に迫っている。
「こんな感じなんですけど、どうでしょう!」
「あぁ、いい感じだね。これなら明日明後日くらいには完成できそうだな」
「間に合いそうでよかった」そう優しく笑いながら言ってくれる三ツ谷くんは本当に偉大だ。素敵すぎる。先生のおかげです、ありがとうございます!そう頭を下げ、手に持っていた作業中の物を広げてみる。
うん、我ながらいい感じ。彼が貸してくれたたくさんの手芸本の中から選んだのは、小学校の家庭科の授業で一度作ったことのあるエプロンだった。
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「へえ、エプロンか!」
「うん!うちのお母さん料理が趣味でさ。これなら毎日使えるしいいかと思って。だけど、初心者にはハードル高いかな…」
「いやそんなことないよ。やって作れないものはないと思うし、なんたってオレが教えるんだぜ」
「あはは!さすが部長だね!頼もしい限りです」
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小学生の時作ったエプロンは無惨にもとても普段使いできるようなものではなかった。不器用で縫い目はガタガタの散々な代物だったけれど、今私の手にあるエプロンは自分で言うのもなんだけど、え?商品化できるんじゃない?というレベルの完成度。何もかも全て彼のおかげだった。
「そろそろ時間か、Aさん帰ろう」
彼はこうして一緒に作業した後は必ず日が暮れる前には「帰ろう」と言い、毎日家まで送り届けてくれた。
今日も肩を並べながら一緒に校門へと向かう。
「A…」
いつも通り三ツ谷くんと談笑しながら丁度校門を出たとき、ふと聞こえた自分の名前に後ろを振り向けばそこには彼氏、駿の姿があった。
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knnk99(プロフ) - 累さん» 累様 嬉しいコメントありがとうございます。佐野くんカッコ良すぎますよね…あんな闇を抱えた男前なんとかしてあげたくなっちゃいますよね笑 のんびり更新ですが気長にこれからもお付き合いいただけましたら幸いです。ありがとうございます! (2021年8月24日 1時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
累(プロフ) - 作品読ませて頂きました。続編はこれからですが、私もマイキー大好きなので、これからの夢主ちゃんとの絡み楽しみにしています。 (2021年8月21日 17時) (レス) id: 755be2d6bc (このIDを非表示/違反報告)
knnk99(プロフ) - 麗さん» 麗様 ご指摘ありがとうございます!気がつきませんでした( ; ; )修正させていただきました!教えていただき、またお読みいただきとっても嬉しいです!ありがとうございます(^ ^) (2021年8月2日 18時) (レス) id: d08a794dcd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 48ページ 一ヶ所名前変換が出来ていないところありました。 (2021年8月2日 18時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柴咲華 | 作成日時:2021年7月17日 4時