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『分かっていますよ。ただ、加賀美さんの言い方が父に似ていて、ふふ、すみません』
また、少し笑みを溢すと彼は下を向いた。と思ったらすぐに顔をあげこちらにツカツカと近づいてきた。
「本当に、お怪我はないのですね?」
そっと手を取られ、こちらを見つめてくる加賀美さん。きれいな顔だな、日本人らしい髪色に瞳で。あぁ、なんて羨ましい。
『本当に大丈夫ですよ。わざわざお気遣いありがとうございます』
「なら、良いのですが、」
何か言い淀んでる。なんだろう
「瞬さん」
『なんでしょうか?』
「あの女性、貴方にグラスを投げつけた女性はご存知ですか?」
『いえ、残念ながら』
「そう、ですか」
言い淀んでいたことはこれ?その割にはまだ何か言いたそうだけれど。
少し考えていると加賀美さんがすぅ、と息を吸い声をかけてきた。
「帰りのお車を用意しました。今日は取り敢えず風間さん、お父君と一緒に家へお戻りになってはいかがでしょう?」
『分かりました。ですが、父の同伴は大丈夫です。今日は様々な業種の重役がいらっしゃるらしいですし、私1人で大丈夫です』
「そんなの!、そのようなことはありません。風間家の方、それもご子息様が傷つけられたのです。何方かと一緒でなければ、こちらも安心して送り出せません。」
加賀美さん、何をそんなに必死になっているのだろう。長男でもない私に、たとえ死んだとしても何も影響がない僕にどうしてここまで声を荒げるのだろうか。
『では、わかりました。父に相談して何方かつけてもらうようお願いして参ります。』
「いえ、それなら私が行きます。瞬さんはこちらで待っていてください。」
また、置いて行かれてしまった。
さみしいなぁ
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作者名:knn | 作成日時:2023年5月4日 21時