4話 ページ4
「いろーんな奴と付き合ったぜ?誰か一人くらい好きになれるかもな、って思ったんだよ。ま、無理だったけど。あっちから告るくせに、俺フラレんだよなぁ。おかしくねぇ?」
「『本当に私のこと好きなの?』って。そういう意味で好きになれたら、そう言ってるっつの」
「…………悪ぃな、やっぱ何もねぇ。はあ、俺酔ってんのか?」
まるで私そのものだ、と思った。きっと目の前の人は、私と同じように、人を好きにならない。初めての仲間だった。
「分かりますよ。……私も、恋愛なんて分からないままです。一生懸命周りと話を合わせても、なんかおかしくって。……『好きな人誰?』なんて聞かれても、そんなの知らんわって感じですよ、本当に」
「……私も酔ってるかもしれませんね」
また、コーヒーを飲んだ。時間が経ったせいで、少しぬるい。パソコンの画面に写るカーソルを動かして、作り上げたデータを提出した。これで今日の分は終わりだ。
「……お前も?」
「大田さん、ちょっと飲み行きませんか」
大田さんの言葉は無視して、お酒を飲むジェスチャーをしてみる。彼は「行く」と強く頷いた。どうやら、お互い初めての仲間を逃したくないようだった。
――――
ごつん、とビールを置く。傍には空のそれが何本もある。
「で、Aもそうなのか?」
「おそらくは」
私も「そう」とは、人を好きになったことがない、ということだ。私の返事を聞いて、大田さんは「そうか」とどこか安心したように笑った。
すっと枝豆に手を伸ばして、食べた。その後に少し水を飲んで、ため息をついた。
「好きって、何だと思います……?友人として好き、じゃいけないんですか……?」
「分かりすぎてつれぇわ……!!マジでそれよな、どうしてダチとして好きで満足してくれねぇんだよ……」
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作者名:梅干し茶漬け | 作成日時:2021年8月11日 20時