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彼女の好きなところはたくさんある。笑顔も、優しくて料理上手なところも、仕事を終えて部屋着になって、髪を下ろしたところも好きだ。ふたりで会うときには髪をまとめていることが多いから、必然と惹かれるのかもしれなかった。あ、今の耳に髪をかけるのもいい。
『駿貴、さん』
目を伏せたまま、彼女がぽつりと俺の名前を呼んだ。それからちらりと一瞬だけこちらを見て、また目を伏せる。
「ん?」
この後彼女の口から発せられる言葉の予想がついていた俺は、わざとらしく笑顔で聞き返す。
『あの…ね』
ぴたりと肩を強ばらせ、小さく深呼吸。たっぷり時間をとって俺に目を合わせるその間も、彼女のことを見つめていた。
『好き、よ』
ちゃんと、駿貴さんのこと。段々と口ごもっていく、その言い方すら愛おしい。もう付き合って何年も経つのに、いつまでも初々しい彼女が好きだ。
「A、愛してる」
真剣な顔で告げると、恥ずかしさに耐えきれなかったらしく顔を背けられてしまった。いつも飲んでいるカモミールティーの入ったマグカップに口を付けて、恥ずかしさを噛み殺しているようだ。ほんっとに可愛いな。
また寂しい時間になるけれど、ハーブティー片手に照れる姿を画面越しに見るのも、案外悪くない。
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カモミールの花言葉『逆境に耐える』
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作者名:エリッサ | 作成日時:2021年1月7日 19時