安心してよカモミール/sgi ページ5
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『会えなく…なっちゃったね』
はぁ、とAがしょんぼりと肩を落としてため息を吐いた。どうせ今年は実家に帰れないから、と年末年始を一緒に過ごしたばかりだった。
接客業の彼女の仕事が始まってしまった以上、この状況下で会うことは出来ないだろう。いつ会えるようになるのか分からず、やきもきした時間を過ごすことしか出来そうにない。
「会えるようになったときを楽しみにしてな」
そしたらナイスガイが何でもしてあげるから、とおどけて見せれば彼女もクスクスと笑った。
会えないのは、正直寂しいけど。また会えるようになったら、と考えたらいい。
会えるようになったらデートもしたいし旅行にも行きたい。何より抱きしめて、キスをしたい。何となく隣にいることが当たり前になっていた温もりが恋しくて、手遊びのようにブランケットを握りしめた。
「好きだよ」
『…わ、わたしも』
会えなくとも、伝えられることは伝えておかねばならない。画面越しのAを見つめて愛を口にすると、普段冷静な彼女が耳を赤く染めて視線を逸らした。
「まーた照れてる」
『緊張するのよ、!』
いわゆるギャップ萌えってやつで、クールな彼女が恥ずかしがる姿は本当に可愛い。ああなんで傍にいねえんだろうなあ、なんて思ったところで仕方ないが、どうにも抱きしめたくなる。
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作者名:エリッサ | 作成日時:2021年1月7日 19時