招福のミモザ/fkr ページ26
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最近Aの様子がおかしい。今までワンピースを着ることが多かったのに、急にズボンを履くようになった。以前よりもスマートフォンをいじる時間が増えた。しかも真剣な顔で。先週なんて花瓶に花が飾ってあった。今まで興味を示さなかったのに、どういう風の吹き回しだろう。
仕事がそれなりに忙しい俺でさえこんなにも変化に気付くのだから、多分もっと変わっているんだと思う。
＿＿＿＿＿でも。
｢拳くん、ごはんできたよ｣
｢ね、この謎解き教えて！｣
｢ここ行きたいね｣
俺に対する態度はいつも通りの彼女なのだ。明るくておしゃべりで、毎日バレないように野菜を忍ばせてくる、いつものAだ。
でもだからこそ不安になるし、彼女の行動が不自然に見える。考え過ぎかもしれない、けど。
｢浮気、してるのかな｣
そういう人じゃないことは、俺が一番よく分かってる。それでも浮気してるんじゃないか、と疑ってしまうのは、今俺たちが『マンネリ』だからだった。
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｢じゃあ拳くん、行ってくるね｣
起き抜けでまだ瞼が重い俺に、すっかり準備の整った彼女がそう告げた。
｢今日休みじゃなかった？｣
週末に確認した彼女のスケジュールには、今日の日付に印がつけてあったはずだ。
｢休みだよ｣
花屋さんに行ってこようと思って。ぴたりと彼女が指さした花瓶には、挿してあった花がなくなっていた。
｢…行ってらっしゃい｣
彼女を見送って、顔を洗う。そして一息ついてから、はたと違和感に気付いた。
あんな指輪、持ってたっけ。金色の大ぶりな、伊沢が着けてそうなやつ。
｢まさか｣
やっぱり浮気なんじゃ？そう思ってしまったらいてもたってもいられない。朝食もそこそこに、俺は家を飛び出した。
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作者名：エリッサ | 作成日時：2021年1月7日 19時
