カップ記念日/kwmr ページ10
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ショッピングモールを上から下まで回ること数時間。同じお店を行ったり来たりして、きっと店員さんも不思議に思っていることだろう。
「記念日って何渡したらいいんだ…」
そう、たったそれだけのことに、僕は悩んでいるのだった。
カレンダーを見て、Aさんに好きだと伝えたのはこんな時期だったなあ、と思ったのがこの間の水曜日。
そうか付き合ってもう1年か、なんてぼんやり考えていたのだけど、ふと気づく。世の男性は、記念日に彼女にプレゼントを渡すのだということに。
「…深刻だ」
恋人と呼べる人がいなかった期間が長かったせいか、女性との付き合い方などとうに忘れてしまっている。昔の記憶を引っ張り出すにしても、過去の自分などあてにならなさそうだ。
兎にも角にも、まずは会う予定を取り付けなければ。彼女に連絡をして、予定をきいて、それからあとは___
というわけで今日に至る。この時代、ネットで買ってしまう手もあったけれど、なんとなく自分の目で見て選びたかったのだ、なんとなく。
それにしてもプレゼントが決まらない。アクセサリー、アメニティ、化粧品、色々見て回ったものの、ピンとくるものがなかった。
「どーしたもんかな」
このまま悩み続けるわけにもいかないし、どこかで踏ん切りをつける必要がある。
…いや待てよ。以前、Aがほしいと言っていたものがあったような気がする。それさえ思い出せばいいじゃないか。確かあれは、福良と話をしていたときだ。
急いでフロアマップを確認しに行き、エスカレーターを駆け上がる。平日のせいか人はそれほど多くない。
「あった、」
これを渡すのは少し気恥しいけど、彼女のためなら。
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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。「香りにキスして」の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな?と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリッサ | 作成日時:2020年9月26日 13時