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「お疲れ様でーす……え、」
オフィスのドアを開けて第一声、思わず口元を押さえた。拓哉さんが着ていたのは、私があげた、ペアルックのセーター。彼に似合うものを、とうんうん唸って考えた末に見つけた、紺色のセーターだった。
「A…何でそれ着てるの」
奇しくも私が今日着ているのも同じセーター。特に考えず着てきたのだけど、運命とはかくも突然だ。
「いや、拓哉さんだって」
今まで着てるの見たことないのに、なんで。お互いぽかんと口を開けて、顔を見合せた。
「河村ね、Aさんがいないときだけ着てるんだよ、それ」
「え？」
聞けば、私が出勤しない日を見計らって着ていたらしい。伊沢さんにからかわれるのがめんどくさいからだとかなんとか彼は言っていたけれど、楽しそうに笑う福良さんの顔が全てを物語っていた。
「ほら、ちゃんと言ってあげないと」
くい、と顎をしゃくって福良さんが拓哉さんを促す。少しだけ不服そうな顔をしてから、彼は眼鏡を外して指を組んだ。
「着ないわけ、ないでしょう…」
お揃いが嬉しいのは、あなただけじゃないんですよ。そう呟いて、目にかかった前髪を払う。
……なんだ、取り越し苦労だったのか。急にどっと安堵が押し寄せて、今まで背負っていた何かがストンと落ちた。
「拓哉さん」
「はい」
「…好きです」
彼がぎょ、っと目を見開く。こんなところで言うんじゃないよ、なんて咎められてしまったけど、その耳が赤いのを私は知っている。
「僕も、だよ」
すれ違いざまに囁いた、その言葉は私だけのもの。
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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。｢香りにキスして｣の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな？と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (
レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリッサ | 作成日時：2020年9月26日 13時
