すれ違ってセーター/kwmr ページ27
*
「分かりました、なんでも言うこと聞きますよ」
「ホントですか？！」
あーあ言っちゃった。なんでも、という言葉ほど恐ろしいものはないというのに、僕は何を言ってしまってるんだろうか。
「何にしようかなあ…」
さっきまで肩を落としていたのに、ないた烏がもう笑うとはまさにこのことだ。
ここ最近忙しかったのと、体調の所為もあってAさんにあまり時間を割けなかった。
仕方のないことだし、彼女も了解してくれていた。だけどやはり、心にはくるようで寂しそうな顔をしているのが現状だ。どこかですれ違ってしまうのが怖くて、連絡さえも出来ていなかったのが原因だろうか。
どうしても、申し訳ないな、という気持ちになる。そこで、週末のデートの予定をキャンセルする代わりにひとつ、言うことを聞くと言ってしまったのがつい先程のことだった。
「拓哉さん、決めました！」
「はい、何にするの」
「私、ペアルックがしたいです」
…そう来たか。予想もしていなかった範囲のことで、咄嗟には頭が回らない。まあでも、受け入れる他ないのだけど。
拓哉さんがあげた服を着てくれない。もしかしたら着ているのかもしれないけれど、少なくとも私は着ているところを見た事がない。ペアルックなのだから、2人できてこそだと思うのに。
「しかた、ないのかな」
何でもいうことをきいてくれる。そう彼が言ってくれた、いや言わせてしまったのか。本当にいいのか、と何度も念押しをして、確認に確認を重ねたから、不本意ではないはずだけど、それでも心配だった。…無理させてることに変わりはないと思ったから。
『ごめん、今から出てこれる？』
電子音が福良さんからの連絡を告げる。どうしても明日までに終わらせたい仕事で、チェックに来てほしいとのことだった。
他に来れそうなのが私しかいないとなれば出勤するしかない。必要最低限のものだけを鞄に詰めて、ブラウンのリップを塗り直した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 127人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。｢香りにキスして｣の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな？と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (
レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：エリッサ | 作成日時：2020年9月26日 13時
