甘い香りに恋してる/ko-chan ページ23
*
ソワソワしちゃうときってない？落ち着かなくて、もじもじしちゃって、でも言えないもどかしい気持ち。
そんなときってどうしたらいいんだろう。自分の知識を総動員してみても、その答えは分かりそうにない。
「ふふ、そんな緊張しなくていいのに」
コトリとコップをテーブルに置いて、Aが笑った。まだ名前で呼ぶことすら慣れていない俺は、初めて訪れた彼女の部屋でソワソワしているのだった。
「いや、別に…」
誤魔化すのが下手だ、なんてよく言われる。どちらかと言えば顔に出やすい方だとは思うけど、あんまり自覚はない。
恋愛経験が全くないわけじゃないし、それなりにしてきたつもりだ。それなのにこんなに緊張してしまうのは、いつも以上に彼女の＿＿＿＿甘い、ムスクのような香りがするからだった。
普段はちょっと近づいたときに香るくらいなのに、この部屋は彼女の匂いでいっぱいで、クラクラしてしまいそう。
「航平くん？どうしたの」
黙りを決め込んでいた俺に、ずい、と彼女が顔を近づけた。突然の接近に、思わず息を飲む。
「あ、あの本いいなって」
「何言ってるの、航平くんが買ってくれたやつでしょ」
指さしたそれは俺が買ってプレゼントしたやつで(しかも最近！)、さらに墓穴を掘ることになってしまった。…最悪だ。
「もう、変な人ねぇ」
クスクスと彼女が笑いだしたので、事なきを得たけど、俺の頭は彼女の甘い匂いでいっぱいだった。
「疲れたぁ」
ガチャリ、玄関のドアを閉めるなり安堵のようなため息が出た。ソワソワするというのは妙に神経を使うもので、どうにも精神的に疲れてしまったらしい。
録画してあるドラマでも見ようか、それともクイズの勉強をしようか。そんなことを考えながら上着を脱いで、ハンガーを手に取る。ふわり、ほんの少しだけ、甘い、ムスクのような香りが漂った。
「ん？」
上着に鼻を寄せて見ると、どうやら俺の上着から微かに匂いがする。今日彼女の部屋にいたからだろうか。
「…ふ、」
髪からもほんの少し甘い匂いがして、無意識に笑みが零れた。なんか…ちょっと嬉しい。
ふにゃりと目尻が下がってしまうような、甘い香りに思いを馳せてしまうような、そんな夕暮れ恋の時間。
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スマイレージの『夕暮れ 恋の時間』を聞いてもらえると、きっと彼女の気持ちも分かるはず。このフレーズ大好きなんですよね。
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愛と服に包まれたなら/izw→←mon aromeで欺いて/ymmt
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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。｢香りにキスして｣の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな？と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (
レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリッサ | 作成日時：2020年9月26日 13時
