なぞる指輪/kwmr ページ3
*
「かつて心臓に繋がる/」
「左手薬指」
んもう、即答なんて面白くない。涼しい顔でさらりと答えを出してしまう河村さんが羨ましくて、憎らしい。
「なんです、そんな不満そうな顔をして」
「別になんでもないですよ…」
クイズを全く知らない私が勉強を始めたのは、あなたに近づきたいからだというのに。伊沢さんや福良さんと楽しそうにクイズをする姿に、憧れを抱いていた。
「ところで」
徐に河村さんが切り出した。もう疾うに作業に戻ってしまったと思っていたのに、まだ話は続いていたらしい。
「実際には心臓に繋がる血管なんて至る所にあるわけですが」
「うわぁ、夢がない」
古代人がロマンチックに考えた話をぶち壊そうとするなんて。それも彼らしいと言ってしまえばそれまでなのだけど。
「どうして左手薬指だったんでしょうね」
すっ、と音も立てずに河村さんが私の手を取った。予想以上に冷たい彼の手に、きゅっと身が縮こまる。
「随分中途半端だと思いませんか」
太い血管が通っているなら親指の方が合理的でしょ。そう言いながら、人差し指で私の薬指から腕へとなぞり上げていく。
「ねぇ、Aさん」
妖艶に微笑んで私を見るその瞳に、心臓が高鳴った。
「かわむらさ、」
「…なーんて、冗談冗談」
本気にした?と悪魔的な笑みを見せたその顔に、今度は何か投げつけてやりたくなった。
「からかわないでください!」
お子様なんだから大人しくからかわれておいてよ、なんて笑う河村さんに、膨らませた私の頬は当然真っ赤だった。
「ああもう、大好き…」
焚き付けられたみたいな恋心は、日暮れまで頬を赤く染め続けていた。
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そういや今までこういう河村さん書いたことなかったな、という思いつきで。
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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。「香りにキスして」の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな?と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:エリッサ | 作成日時:2020年9月26日 13時