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僕が理由を問うた途端、彼女は言い淀んだ。それでもぎゅっと唇をかみしめて、もう一度僕を見る。

「河村くん、に」

そこまで言って、また言い淀む。言いたくないであろうことを言わせてしまっているが、このままはいそうですかという訳にはいかなかった。

「…好かれ、たくて」

数瞬の間。思わず目を見開いた僕に、Aさんは口元に手を当てて笑った。

「煙草…好きじゃないでしょう?」

だからまずは禁煙しなきゃって思ったの。バツの悪そうにポーチを握りしめた彼女の表情は、なんだかとても悲しそうになっていた。

「Aさん、煙草咥えて」

少しだけ躊躇ってから、彼女はおずおずと煙草を咥えた。その間に僕も1本拝借して咥え、そっと火をつけた。

煙草を吸うのは何年ぶりだろう。少し咳き込んでしまったけど、2本でギブアップしてしまったあの頃よりも、不思議と嫌ではなかった。

彼女に近寄ると、足元のアスファルトが音をたてた。咥えた煙草を彼女のに押し当て、吸えと目配せをする。

ジリ、と火がついて、煙が上がる。びっくりした顔の彼女は、耳を赤くして噎せた。

「…もう、とっくに好きですよ」

煙草を吸うあなたが。言葉の出なくなってしまった彼女が咳き込んで、僕は笑った。

紅茶の匂いの煙が、僕達を包んでいる。ちょっと距離が近づいた。煙が重なるまで、あと少し。

狡い匂い、好きじゃない/sgi→←香りにキスして/kwmr



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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。「香りにキスして」の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな?と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:エリッサ | 作成日時:2020年9月26日 13時

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