香りは動かぬ証拠なり/fkr ページ18
*
「じゃあ、先に行ってるね」
靴紐を結びながら、メイク途中のAに声をかける。彼女の家に泊まってそのままオフィスに行くなんて、俺もまだまだ若いのかなあ。
「行ってらっしゃあい」
パタパタとかけてきて手を振ってくれる彼女を見て、まるで新婚さんみたいだなと口角が緩んだ。
「お、福良」
パソコンから顔を上げ、河村がこちらを一瞥する。ひらりと手を挙げて、それから＿＿＿＿＿＿顔を顰めた。
「ん？何、どうしたの」
こっちに来いと言うように顎をしゃくって俺を呼ぶ。そして顔を近づけて、小さく頷いた。
「…Aさんの家、泊まってきただろ」
「なんで分か……柔軟剤か」
彼女が洗濯してくれたから、同じ匂いがするのか。何にも気にしていなかったから、言われるまで気づかなかった。
「でもよく分かったな」
河村は特別鼻がいいわけじゃないはずだ。それなのに俺が彼女と同じ匂いだとすぐに気づくのは、些か不自然な気がする。
今度は俺が顔を顰めると、河村は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「別にとって食ったりしない」
だって福良怖いじゃん。河村はそう言って笑ったけど、掴みどころがないやつだから信用出来なかった。
「お疲れさまでーす」
ふわりと俺と同じ匂いをさせて、Aが部屋に入ってくる。ほんの少しギスギスした空気が、彼女のおかげで和らいだ。
「ん、お疲れさま」
この後、『Aさん、福良さんとおんなじ匂いですね』なんていうこうちゃんの発言に、思わず河村と笑ってしまったのは、また別の話。
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てんしゅ(プロフ) - 初めまして。いつもドキドキしながら読ませていただいております。｢香りにキスして｣の煙草はアークロイヤルのパラダイスティーかな？と想像しました。自分もアークを吸っているのでにやにやしてしまいました。これからも応援してます。 (2020年12月7日 20時) (
レス) id: 02b4360ac3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリッサ | 作成日時：2020年9月26日 13時
