フラップで覆う愛 (ページ39)

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靴紐ヘリカーゼ/ko-chan ページ39

今俺は人生で1番緊張している。緊張しすぎて上手く話せないし手汗がやばい。未だかつて体験したことない緊張に、俺はさらに焦っていた。

なんでかって？…実は、今Aさんとの初デートだからだ。先日ついにデートに誘うことに成功したのだ。当日こんなに緊張するとは思わなかったけど。

「航平くん？大丈夫？」

心配そうに俺を見上げるAさん。ああかわいいな、じゃなくて心配されるほどやばいのか、俺。

彼女の上目遣いにさらに心臓の鼓動が速くなる。苗字が同じだから、という理由で名前で呼んでもらうことになったのはいいのだけど、想像以上に破壊力がすごい。

「大丈夫大丈夫」

口ではそう言っても、心の中は大惨事だ。せっかく考えたデートプラン通りに行動出来る気がしない。

大丈夫ならいいけど、と視線を戻した彼女の耳に、ちりんとピアスが揺れた。それに気を取られたせいか、俺はうっかり緩くなっていた靴紐を踏んでしまった。

「あ」

ほどけてしまった靴紐を結びなおそうとしゃがみこむ。うーん、かっこよくないな…

Aさんが立ち止まってくれてるのもなんだか気まずい。焦っているから靴紐を結ぶのも時間がかかってしまった。

どうにか結びなおして立ち上がろうとしたとき、ぽん、と頭を叩かれた。びっくりして顔を上げると、彼女が楽しそうに俺を見下ろしている。

「え、俺頭に何かついてた？」

「そうじゃなくて…」

航平くんを見下ろせてちょっと嬉しい。そう言うと彼女はちょっぴり恥ずかしそうに、でも嬉しそうにはにかんだ。

彼女は女性にしても小柄な方だから、俺だけでなく色んな人を見上げて話さないといけないのが大変だと前に言っていた。

たまにはいいでしょ、とぴかぴかのドヤ顔をしているのを見て、なんだかおかしくて笑ってしまった。

「笑わないでよ！」

「だって、そんなドヤ顔するから」

ひとしきり笑ってから立ち上がって、もう一度彼女を見下ろす。うん、やっぱりこっちの方がいいな。

少し不満そうに俺を見上げたあと、彼女はまたにこりと微笑んだ。

「行こうか」

控えめに手を差し出せば、Aさんはゆるゆると俺の手を取った。小さい手から伝わる体温が心地よい。
気づけばすっかり緊張はなくなっていて、俺たちはデートを楽しむことが出来た。靴紐と一緒に俺の緊張もほどけてしまったみたいだった。

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ヘリガーゼはDNAをほどく酵素。