フラップで覆う愛 (ページ33)

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洗濯機の音に目を覚ますと、時計はもうすぐ16時を回るところだった。随分長い間眠っていたらしい。

ふと自分の胸元を見ると、あのブローチがつけられていた。

「あれ、私つけたっけ…」

沈みかけの夕陽に照らされて光るそれは、さっきよりも綺麗に見える気がした。

ああ、そうだ。これは河村くんがくれたんだ。キスをしている間につけるだなんて、まったく器用なことをしてくれるものだ。

しかし思い出せなかったのは、何故だろう。嫌な思い出というわけではないのに。とはいえ知らず知らずのうちに記憶に蓋をしてしまっていたのは確かなのだけど。

スマートフォンでもう一度時刻を確認しつつSNSに目を通すと、今日5月23日はキスの日です、という文句が目に入った。

「キスの日、？」

確か彼がブローチをくれたのも、この時期ではなかったか。もしかしてあの日、キスの日だったから、普段しないキスをしたのかもしれない。それを言わずにいるのも、なんだか河村くんらしかった。

顔を上げると、泣いているように燃える夕陽が眩しくて思わず目を閉じた。ふいに脳裏に浮かんだのは、彼との思い出ばかりだった。

ゆっくりと目を開けて、宝物箱をぎゅっと抱きしめる。

ねぇ、河村くん。今日くらいは、このブローチ、つけててもいいよね。

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キスの日なので『はたちの青春』オマージュにしようと思ったんですが、許嫁と親の反対というキーワードで河村さんのお話既に書いてました。
無念。

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