ジャケットはスイッチ/ymmt ページ26
初めてのお泊まりって、どうしたらいいのかしら。よしくんと付き合ってもう3ヶ月。付き合いたての頃みたいな緊張感はなくなったけれど、彼の家に来るとなると話は別で。部屋中彼の匂いで落ち着かない。
彼とおうちデートはあまりしなくて、もっぱら出かけていたから彼の家に来るのは今日が初めてなのだ。
お風呂はいってくるから待っててねと言われてまだ５分も経っていないのに、もう1時間くらい待ったような気がする。よしくんの家にいる、というだけですっかり感覚が狂っていた。
このあとどうするのかな、イチャイチャするのかな、なんて雑念が頭をよぎる。いやでもよしくんは誠実だからと自分の雑念を払うように首を振ると、ふわりと彼と同じシャンプーの匂いがした。うう、恥ずかしい…
つけっぱなしのテレビを見るのもなんだか落ち着かなくて、キョロキョロと部屋を見渡すとハンガーラックに掛かっているジャケットに目が止まった。
彼がよく着ている黒地に白のチェックのジャケット。なんとなく魔が差して、彼がまだお風呂に入っていることを確認してそれを手に取った。そーっと袖を通すと、肩幅の問題なのか思っていたよりもぶかぶかに見えた。あんまり身長変わらないのにな。
「ふふ、よしくんの匂い」
同じシャンプーの匂いの髪、彼のジャケット。全身彼に包まれているみたいで心地よい。写真でも撮っちゃおうかな、とスマホを取ろうと振り向くと、目の前によしくんがいた。
「な、見てたの…？」
「うん、Aがニヤニヤしてるとこ見てた」
刹那、ぶわっと顔が赤くなるのがわかった。耳真っ赤だよ、と言ってよしくんは更に顔を寄せてくる。
「そんな可愛いことされたら、我慢できない」
ぎゅっと私を抱きしめて、啄むような軽いキスをする。パチリと合った目は、男の人、だった。
「ね、A」
彼の言動に逐一唾を飲む。なんだか見つめるのが耐えられない。
「いいよね？」
私が頷くよりも先に、私の体はベッドに沈んでいた。
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山本さんのジャケット、なんかいいですよね
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作者名：エリッサ | 作成日時：2020年4月19日 23時
