フラップで覆う愛 (ページ20)

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大会当日。足元を見れば赤とオレンジ。今日は大丈夫、今日は大丈夫。そう自分に言い聞かせてはいるけれど、やっぱり緊張してきて手が震える。せっかく山本くんにミサンガもらったのにダメかもしれない。

緊張しすぎて座っているのが落ち着かない。うろちょろと歩き回っていると、ふいにぽん、と肩に手が置かれた。

「Aさん」

「え？！あ、はい…」

隣にはニコニコといつも通りの笑顔を浮かべた山本くんがいた。距離が近くて余計緊張してしまう。

「大丈夫だから、落ち着いてね」

いつも聞いている男性にしては高い声じゃなくて、男らしい低い声で囁かれて、少しぐらりと来てしまった。これがギャップ萌えか。惚れ直した。

そんなことを考えていると彼のことで頭がいっぱいで、どう走ろうかなどという考えは浮かんでこなかった。これも山本くん効果なのか。気づけば私の番で、そしてまた次の瞬間にはもうレースは終わっていた。自己ベストだった。

「Aやっぱり出来るじゃん！」

きゃあきゃあと友人がはしゃいでいるのがなんだかむず痒かった。もちろん私も嬉しいのだけれど。山本くんにお礼を言おうと辺りを見回すと、彼は手招きをして私を呼んだ。

「山本くん、ミサンガありがとね」

「Aさんの実力だよ、でも役に立ったならよかったよ」

これからも頑張ろうねと2人で笑い合う。

「ね、そういえばさ」

ふと思い出したように彼が切り出した。

「僕もAさんのこと好きなんだ」

僕、も？…『も』ってなんだ。首を傾げると山本くんはいたずらっ子の顔でにやりと笑って顔を寄せた。

「僕のこと好きでしょ？」

「え、っと…」

言わなくても気持ちが伝わるくらい、私の顔は赤くなっていた。夕日に照らされた彼の顔はちっとも変わらないというのに。

ぷつり。足元でミサンガが切れる音がした。それは緊張しなかったからというよりは、むしろ。

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赤とオレンジのミサンガの意味は、『勇気・勝負・希望』

最近長めのが多いですね。読みづらかったらすみません。