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「河村さん」
意に反して声が震えた。気持ちを伝えるのに私の度胸は足りていないようだった。ピタリと足を止めた彼は、名前を呼ばれてゆっくりと頷いた。
「あの、私、」
河村さんのことが好きです、そう言うだけなのに口が動かなかった。手は震え、緊張のせいかアルコールのせいか、口が乾いていた。
もう一度夜風が私の髪をなびかせた。彼は黙って私を見つめていた。汗ばむ手を握りしめ、深呼吸をして彼を見上げる。
「河村さんのこと、好きです」
どうにか振り絞った声は、思っていた以上にか細かった。目をぎゅっと閉じて、上着の裾を握りしめた。
それから河村さんが言葉を発するのに、10数秒もなかったと思うけど、私にはそれが1分にも、1時間にも感じられた。
恐る恐る目を開けると、河村さんは小さくため息をついた。やれやれ、と言ったふうに。
「やっと気づいたか」
「え、」
まるですべてを見透かしていたとでもいうような発言に、心が跳ねた。あの悪魔みたいな笑顔ではなくて、安心しきった笑顔だった。
「俺もAが好きだよ」
そう言うと河村さんは私の頭を撫でた。彼の手があまりにも優しくて、張り詰めていた気持ちがとけ、どっと安堵が襲ってきた。
「ねぇ、付き合ってくれるよね？」
「も、もちろんです」
そりゃよかった、といつもみたいに河村さんはけらけらと笑いだした。なんだかその様子が可笑しくて、私も笑った。
月明かりの下、どちらからともなく手を繋いだ。アルコールはとっくに抜けていた。
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告白する時だけは『俺』って言わせたかった
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エリッサ(プロフ) - ぷいさん» こちらこそ読んでいただいてありがとうございます〜！ (2020年4月28日 19時) (
レス) id: 31771c3fff (このIDを非表示/違反報告)
ぷい(プロフ) - 河村さん推しなのでめちゃくちゃ好きなお話でした(T_T)ありがとうございました(T_T) (2020年4月27日 3時) (レス) id: 791f8d2470 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：エリッサ | 作成日時：2020年4月12日 21時
