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水曜日。
あの日のお誘いには永続効果でもあったらしい。
時間を決めるでも無く、でも何故か同じ時間に家を出る。
お互い視線を地面に向けたまま、取り留めもないことを話す。
そんな北斗との朝がいつの間にか定番化していた。
どうやら彼は朝に強いようで、どの朝でも小綺麗にしている。
今日はオイルでパーマを出して、誰もかけていなさそうな眼鏡をさも当たり前みたいな顔をしてかけている。
ファッションにもこだわりがあるようで、見ていて飽きない。
「ねえ暑くない？まだ6月よ？」
「まあ暑くなっては来たけど…」
そんなこと言うなら重ね着しているロンTかポロシャツのどちらかを脱げばいいのに、と思ったが彼のファッションセンスに許してもらえない気がした。
果歩がいたら問答無用でポロシャツを追い剥ぎされただろう。
そんな暑苦しい格好見てられない！とか言って。
…そういえば。
「北斗って何がきっかけで果歩と仲良くなったの？」
良くない言い方になるけれど、果歩みたいなタイプは苦手そうなのに。
「気付いたらいたのよ」
「というと？」
「講義前1人でいる時に『松村君だよね！』って突然隣座ってさ、ずっと話しかけてきて。それが毎回続くようになったのよ。でも付き纏われるうちに悪い奴じゃないって分かったから、そのまま」
今聞いた話には身に覚えがある。
それは果歩と私の出会いとまるで同じだった。
「っふ、！」
あまりにおかしくて笑いが漏れ出してしまった。
え、ネジ飛んじゃった？なんて隣の彼は戸惑っている。
それでも私の笑いは収まることを知らない。
「…っ、果歩って仲良くなる術それしか持ってないんだよ。私もそうだった」
それを聞くと彼も大きく笑い始めた。
「強行突破しか選択肢ないのかよ」
「それで言うと果歩とたろちゃんって似てるのかも。果歩ほどじゃなかったけど、たろちゃんも同じやり口で仲良くなってる」
額に手を当て、あいつ…と呆れ笑いをひとつ落とした。
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作者名：この葉 | 作成日時：2022年11月22日 23時
