ウサギとカメ、と (ページ11)

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「大我…行った？」

カウンターの奥からひょっこり顔を覗かせたこのおじさまが、ここのカフェのマスター。
そして大我さんのおじいさまでもある。

「行かれましたよ」

ほっと胸を撫で下ろして、フロアへと出てくる。

「気持ち良さそうにしてるからぜひ寝かせてあげたいけど、それだと娘に怒られるんだよね…音大は安くないとかなんとかって」

可愛い孫は20歳を超えても甘やかしたいらしい。
それで私を使われるのは少し迷惑な話だが、おじいちゃん可愛いメンタルになってしまう私も私だ。

「大我って小さい頃から本当に可愛くてね、そこに飾ってあるのが5歳の運動会で」
「マスター、準備しないと間に合いませんよ」

長くなりそうな予感がしたので思わず口を挟むと、予想以上にしょんぼりしてしまった。
その姿は流石に胸が痛い。

フォローをするように、クローズの時に聞きますねと声を掛けた。
そんな私の言葉に、マスターは勢いよく顔を向けにやっと笑うとひとこと。

「夜は長いぞ〜？」

…これは失敗した気がする。

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