棘 Act2【KN】

“好きだ”ってのは ページ40

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夕方になって何とか時間を見つけて、ようやくAに電話することができた。

これまでの経験上、こーいうデマが流れたり、他の子とのそーいうことがバレたりって時は、大抵泣かれるか罵られるか。
顔をひっぱたかれた時もあったかな。

女の子が嫉妬に駆られて歪む顔は見たくない。
だから、淡々と話を聞いてくれる思ったよりも冷静なAに、正直ホッとした。


勝手なもので、しばらく会えないとわかってガッカリしたAの声色に愛しくて堪らなくなって。
自然に口から「好きだよ…」という言葉が零れて、会いたい気持ちが込み上げる。


「好きだ」ってのは、本来はこんなに狂おしい気持ちを表す言葉なんだろーな…と、頭ではちゃんとわかってる。
でも、これまでの使い方が間違ってたから、オレからするとどーしても薄っぺらい言葉のような気がして、こんな言葉じゃ足んなくて…

いつも、なんかA相手に上手く使えない。


それなのに、これ以外の言葉でうまく表現できない感情…なんてもどかしい。



「あー、くそ、会いに行きてーなー！」


思わず本音が出ると、Aはさらりと「…仕方ないよね(笑)」と言って笑った。
わかってっけどさ…会いたいじゃん。


「来週はスタジオ収録があるからさ、休憩室くらいなら行けんじゃねーかな…」


良い思い付きだと思ったのに、「ダメだよ」と速攻却下。


「休憩室は外から見えるから、しばらくは会わない方がいいと思う。
　私は大丈夫だから、落ち着いたら連絡して？」


まーね。確かに会ってしまえば、ただ話をするだけじゃ済みそーにないし。
Aの言うこともごもっとも。そりゃ、オレだって分かってんだけどね。
でも、なんか悔しいから、からかってみる。


「会いたいよ会いたいよーって、A泣いたりしない(笑)？」

「しないよー(笑)！私なら大丈夫！」


そこは、泣いてくれてもいんだけどねー…とも思うけど、予想通りの安定の答えに笑みが漏れた。


「……。そっか(笑)…」

「うん…」


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