金曜日 ページ44
.
金曜日の仕事帰り。
マサトの部屋の前につくと、思わずカバンから合鍵を出しそうになって、一人で可笑しくなった。
そういえば、別れてからもマサトとは外でご飯を食べたりはしてきたけど、こうして部屋に来たのは別れて初めてだ。
ちょっと緊張して、一呼吸置いてからインターホンを押した。
＋＋＋
がちゃりとすぐにドアが開き、スーツからラフな格好に着替えたマサトが顔を出した。
「いらっしゃい。
どうぞ…入って？」
「うん。
おじゃまします」
コートを掛けさせてもらい、リビングのテーブルの壁際に座る。
９か月ぶりのマサトの部屋は、キチンと片付いていて、あの頃のままだった。
テーブルの上には、付き合ってた頃によくデリバリーで頼んでいたピザをマサトが用意してくれている。
飲み物は、私がコンビニで買ってきた缶ビール。
あの頃と同じような光景に、付き合っていた頃に引き戻されそうになり、思わずふるふると頭を振った。
気分を切り替えて、明るい話題を探す。
「あ、そうそう、この間のフレンチ、うちの後輩に紹介したの。昨日、彼氏と早速行ったんだって！」
「へえ、そう」
「そしたらね、味も雰囲気も大満足で、すごく喜んでた」
「喜んでもらえたなら、よかったよ」
「すごく素敵なお店だったもんね。
私も、彼氏ができたら、今度は彼氏と行きたいな…本当にありがとうね、マサト！」
「…それじゃ、はじめよっか」
「うん」
とりあえずは乾杯して、お互いの仕事や近況報告などを笑いながらとりとめなく話す。
マサトは忙しいのに加えて、両親から結婚の話が出てきて困っているようで、それが相談したいことのひとつだと言った。
「そっか…結婚か…」
「こっちの話も聞かずに、勝手に話を進められそうでさ…参るよな」
「そうだね」
ビールを飲みながら、ふと思いついたことを口にしてみる。
「ね、マサトって、実は好きな人いるんじゃないの？」
「…どうして？」
「だって…そんな結婚なんて話が出てるなら、別れましたから今フリーですよって正直に言った方が社内の女子からいっぱいお誘いがきて、よりどりみどりで都合がいいでしょ？
それなのに、敢えて別れたって言わないでほしいっていうことは、もしかして、もう心に決めた人がいるのかな…って」
「…半分正解で、半分不正解というところだな」
ふ…と薄く笑って、マサトが飲みかけの缶ビールを飲み干してから、二本目を開けた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2977人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kico
| 作成日時：2014年11月7日 16時
