中途半端 ページ34
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仕事で飲んでたはずのお酒が、こんなに美味しく楽しく感じられるなんて、あまりない。
最初の乾杯が効いたのか、休憩室の件で多少は気心が知れていたからか…
飲みながらいつの間にか打ち解けて来てしまい、気付けば私は普通の友達みたいな感覚で二宮さんと喋っていた。
二宮さんには、気を廻し過ぎる性格をすぐに見抜かれてしまった。
でも、そのままの私でいいよ、って受け入れてもらえたことが何だかとても嬉しくて…
二宮さんって、やっぱり本当は優しい人なのかもしれない。
意地悪だって、その裏返しなのかも…と思えてきた。
だったら、言われてもそこまで気にせず、思ったまま返していいのかな。
すぐ気を遣ってしまうから、こんなお酒の場では相手との会話が途切れたら焦ってしまうことが多いのに、最初に先廻りしなくていいと言われたからか、二宮さんとだったら無言の間も気にならない。
何だか不思議…
マサトとだって、会話が途切れると気まずいことがあるのに…。
そんな事が頭をよぎったからか、二宮さんがふと思い出したように私に訊ねてきた。
「そうそう、今日のイケメン君…えーと、西村…サンだっけ？…あのヒトって、Aちゃんの彼氏？」
「えっ！…なんで？」
「や、あのヒト、Aちゃんの名前、ふつーに呼び捨てしてたでしょ。そーなのかなーって」
「元カレなんです」と言いそうになったけど、職場では別れた話はしない約束だし。
二宮さんは社内の人じゃないけど、仕事で関係してるから、やっぱり約束は守らなきゃ。
「…うーん、えっと、まあ、そうですかね」
少しだけ迷ったけれど、歯切れ悪く頷いた。
「…ふーん、そーなんだ。優しそーな男だね」
「うーん…そうですね」
私の我儘みたいな理由で、ちゃんと納得して別れてくれた。
今でもあんな風にいい友達として付き合ってくれていて…そういう意味では、本当に優しい人だと思う。
「ん？その間はなによ。優しくないの？」
「優しいですよ。とっても。
…もう、いいじゃないですか。私の話はやめましょう(笑)！」
これ以上は訊かれたくないな…。
どこか中途半端な私の答え。
二宮さんに嘘をついてるみたいで、何だかすごくイヤだ。
「えー、Aちゃん、照れてんの！？」
「違います！これっぽっちも照れてません(笑)！」
そう断言すると、タイミング良く後ろから明るい声がした。
「あれあれー、こんな所でニノ発見―！」
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作者名：kico
| 作成日時：2014年11月7日 16時
