変化 ページ19
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あれから、私と二宮さんの関係が少しだけ変わった気がする。
私が休憩室に行くと、やっぱり勝手に入ってることは多いんだけど、二宮さんは前みたいに電話ばかりしてる訳じゃなくなった。
時々、ゲームしてたり、音楽聴いてたり、私みたいにただ窓の外をぼーっと眺めていたり…そっちの方が電話よりだんだん多くなってきて。
それでも、やっぱり
「二宮さん、勝手に入らないでください！」
私はそう注意して…。
「そーですね、すみませんね！」
二宮さんが、いつものようにしれっと答える…。
だけど、不思議な事に、このやりとりが、前のようにストレスじゃなくなった。
気付いたら…
「今日は冷えますから、もう施錠しますよ」
「りょーかい。
マジで今日はさみーな…」
「そうですね」
「ね、Aちゃん、そのカッコ寒くない？
もっと暖かくてオシャレなやつ…ほら、ワードローブだっけ？
若い女の子たちで、そーいうの着てる子もたくさんいるでしょ？
あんなカッコしないの？」
「苦情を受けるので、うちはみんなスーツか事務服なんですよ。
私はスーツより事務服の方が動きやすいし、洗濯もしやすいので、事務服が好きなんです」
「動きやすいって、アナタ(笑)…
そりゃまたAちゃんらしい、アクティブな毎日だな」
なんて少しだけ雑談を交わしてみたり…
「Aちゃん、あそこに新しいビル建ってんの知ってる？」
「え？どこですか？」
「ほら、あそこ！」
「あ、ほんとだ…」
「あれ完成しちゃうと、東京タワー隠れちゃうんじゃない？」
「えー…なんか、ショックですね…」
「だねー」
なんて一緒に窓の外を見たりすることも増えてきて…
何となく、やっぱり二宮さんって、ちょっと意地悪なだけで、そんな悪い人じゃないんだな…って思えるようになってきた。
でも、もちろん、だからといって利用規程に利用者が定められている以上は、特別扱いなんてできない。
結局は「はい、施錠するので出てください！」と彼を追い立てて、二宮さんは「はいはい。そんな押さないで(笑)」と、されるがまま休憩室から出て行くんだけど…。
でも、前のようにキリキリしたイヤな感じじゃなくて…
上手く言えないけど、こう…どこか穏やかなものに変わってきた気がする。
そして…
いつの間にか、少しずつ…
そんな穏やかなやりとりが、当たり前のように私たちの間で繰り返されるようになっていた…。
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作者名：kico
| 作成日時：2014年11月7日 16時
