目が逸らせない。 ページ11
.
今日は、マネージャーの車の送迎の関係で、珍しく大野さんと一緒にスタジオ入りすることになった。
いつもの直通エレベーターが使えなくて、大野さんとマネージャーと３人で社員用エレベーターをホールで待ってると、Aちゃんが正面玄関ロビーの目立つ場所で、柄の悪いねちっこそうな男から、ねちねちと嫌味を大声で言われているのが見えた。
いやー、トラブルや苦情って、案外多いんだね。
本人は気付いてないけど、局内を歩いていると、時々Aちゃんを見掛ける。
廊下を歩いていたら、向こう側で見学していたお客さん同士のトラブルを処理してたり…
地下駐車場への通路を歩いていたら、その手前のホールで苦情言われていたり…
聞こえる範囲でしか内容はわかんないけど、他人のオレからしたらそーんな事で騒がなくてもいいじゃん…ってな小さな話なのに、彼女が申し訳なさそうに笑顔で頭を下げて一生懸命対応してんだよね。
あんな場面みたら、お客様相談室だっけ？Aちゃんの仕事って、大変だなと思う。
おまけに、休憩室では、どこぞのアイドルにからかわれて…
なんかそう思うと、ちょっと申し訳ない。
＋＋＋
今日の相手は、いやーな感じのする威圧的な大柄のオッサンだった。
放送している番組について、どう考えてもあんたの屁理屈だろ？と言いたくなる内容を、しつこく何回も繰り返してる。
Aちゃんは、いつも見掛けている笑顔とも、オレにからかわれてムキになってツンツンした顔とも違った。
乱暴な言葉を矢継ぎ早に浴びせかけているオッサン相手に、小柄ながらも臆することなく、声は少し震えているけど凛と背筋をまっすぐに、Aちゃんはその理屈の間違いをひとつひとつ冷静に指摘しようとしていて…
そこには、いつもとちょっと違った真剣モードのAちゃんが居て、目が逸らせない。
大野さんもオレの視線に気づいて、ロビーの騒ぎに眉を顰める。
「ひでーな、あのオッサン。
あんな小っこい女の子に、あっこまでぎゃんぎゃん言わなくてもいーじゃんか」
「まるでストレス解消のために、わざと難癖をつけているようで、見てられませんね。
あ、大野さん、二宮さん、エレベーター来ましたよ。どうぞ」
マネージャーがそう言って、エレベーターの扉を手で押さえて、オレたちを誘導した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2977人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：kico
| 作成日時：2014年11月7日 16時
