声 ページ34
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相葉さんが帰った後、寝室のベッドに腰掛けて、とりあえずソファで使ったブランケットを手に畳んでいると、和也も入ってきて私の隣に並んで腰掛けた。
「あー、なんかもう、あの人、無駄に元気だからなー(笑)」
疲れたー―…と、一人で呆れたように笑って、和也はそのまま後ろにバフンと倒れて、ベッドに上体を投げだした。
左腕で顔を覆い、斜め右上の天井を見上げている。
「…相葉さん、間に合ったかな？…申し訳なかったね」
「いーんじゃない？自分が受け取るの忘れてたワケだし。
…あ、オレもか(笑)」
自分で可笑しくなったのか、和也は顔を覆ったまま肩を揺らして笑っている。
ちょうど和也の表情は見えなくて、私はそのまま反対側の窓へと視線を動かした。
高層階角部屋の寝室から見える、窓越しの夜景。
眼下に広がるのは、東京の街に色とりどりに煌めく宝石のような光景。
大都会・東京ならではの、夜の魔法。
和也はいつもあまり興味なさそうだけど、私は初めてここからの夜景を見た時、すごく感激して…。
和也の帰りが遅くて、一人でここで待っている時は、よくこの窓からの景色を眺めていたりする。
私の大好きな夜景…。
「いつ見ても、本当に綺麗だね…」
「…なにが？」
「ここから見る夜景…」
「ああ…」
腕で顔を覆ったまま、和也がちらりと窓の方向を見遣って、僅かに顔を動かす。
「A…」
「ん？」
「……」
「…なに？」
「……。…ハワイのさ…」
「うん…」
「…泊まったホテルからも夜景見れたけど……違ったな…」
「そうなんだ。…綺麗だった？」
「や。キレイなんだろーけど……オレは、東京の…ここの夜景の方が落ち着く」
そう言って、和也は腕で覆った顔をまた元の位置に戻した。
「そっか…」
「…なんでかなー…
向こうでさ…そんな事思った…」
「うん…」
和也の声のトーンが、いつもよりほんの少しだけ低い。
ふざけたり、バカな話をしたりはよくあるけど、真剣な話はそんなに頻繁にはしない。
でも、たまにそういう深い話をする時は、和也の声がほんの少しだけ低くなる。
「……さっきさ、相葉さんが言ってた事…ちょっと違ってんだよね…」
顔を背けたまま、和也がそう言った。
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作者名：kico
| 作成日時：2014年9月28日 15時
