カッコ良かった ページ32
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「ちょっと、やめなさいって。
A、いま手が離せないから、出れないの！」
和也が止めてくれている。
「大丈夫、だーいじょぶ、全部わかってる、見ない見ない。
出てこなくていいの。
声だけ。挨拶だけしたいじゃん？
…Aちゃん、お邪魔してごめんねー！！
出てこなくていいけど、聞こえてるー！？」
和也は出るなって言ってたけど…
呼ばれて返事しない訳にはいかないよね。
「あ、いえ！はい！」
一体どっちなんだ！というような返事をとりあえず返して、慌てて乱れた髪を直し、一応、鏡で服装を確認してみた。
慌てて身に付けたカットソーとフレアスカートは、皺になりにくい素材だったから問題なし。
見えるところには、特に痕を残されてもない。
和也が出るなって言ってたから出るつもりはないけど、もし出たとしても、あとはグロスを塗り直したら、別に変じゃないよね。
簡単に鏡でグロスを引いて、玄関からは死角の廊下の曲がり角まで行ってみると、相葉さんがその気配を待っていたかのように、私に話しかけてきた。
「ね、Aちゃん、あのさー、今回、ニノ、すっげー頑張ったんだよね！」
「和也が…すごく…頑張った…？」
何を…？
…あ！
それって…
「あ！…こらやめろ、アイバカ！！」
慌てる和也を無視して、相葉さんが続ける。
「そう。もう、本当に裏でもすっごく頑張って、そのくせオレらにも辛いとか何も言わないんだよね。
言わないんだけど、実際、本当に本っ当にいろいろ大変だったと思うの！」
もしかして…
相葉さん、それって…？
「でも、ちゃーんと、ニノは自分の力で最後まで頑張って…
もうそれがね、オレから見ても、すっごくカッコ良かったの！」
自分の力で…
最後まで頑張って…
すっごくカッコ良かった…
「あーーーー！もううるさい！
んなこと言っても、何の事だかAにはわかんねーだろ！？
余計な事言わないで、帰った帰った！」
「待ってよ！
言いたいの、オレがAちゃんに！
そりゃ、わかんないかもしんないけどさー…」
「そんなことないです！！」
思わず、拳を握りしめて、玄関に飛び出していた。
「A…？」
「Aちゃん！」
一瞬の間をあけて、和也が怒鳴った。
「…あっ！！
なっ！バカ！
出てくんなっつったろ！！」
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作者名：kico
| 作成日時：2014年9月28日 15時
