敵に廻すと怖い人。 ページ45
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「これ？…勿論あるよ。普通に着てる」
「雨の日にそれを着て外を出歩くことも？」
「そりゃあるだろーね。普段着だもん、別に雨とか晴れとか気にして着てないけど…なんで？」
「…小笠原さんも一緒に？」
「はあ？何言ってんだか、あのヒトと一緒に外を出歩くことなんて、まずありえない…」
ピンクのパーカー…雨……A……？
ひとつの甘い記憶が頭に蘇って、妙な胸騒ぎがした。
まさか…ね…。
だけど、なんかヤな予感がする…。
「…ちょっと待った。
あのさ…。貴方さっきから…一体何の話をしてんの…？」
「……」
マネージャーは、何も答えずにハンドルを切った。
気付けばもうスタジオの駐車場入口で、ゲートのセキュリティをクリアした車は地下へと進み、決められたスペースで停まる。
「…私が話せるのはここまでです」
「は！？貴方ね、こんな中途半端な話で、「二宮さん」」
マネージャーが強い口調で遮った。
「“次”はないんです」
「……。なによ、“次”って？」
「私は二宮さんの味方で居たいと思っています。
しかし、私には事務所の利益の為に事務所の指示に従い、二宮和也というアイドルが円滑に活動できるようにマネージメントする義務があります。それが私の仕事なのです。
そこに個人的な感情が介在する余地はない…それを忘れないでください」
オレに答えることなく、まるで自分に言い聞かせるように断言されて。
「だからどーいう意味なの。まるで、もう味方じゃ居られないってわかってるような言い草じゃないよ。ちゃんと説明…」
「―――時間です」
マネージャーはオレの言葉を最後まで待つことなく、運転席からスライドドアを開けた。
「他の皆さんを待たせる訳にはいきません。行きましょう、二宮さん」
＋＋＋
結局、マネージャーはその件でオレが何を訊いても、それ以上はもう喋らなかった。
何があったのかは知んないけれど、あの様子じゃきっと事務所に口止めされてるに違いない。
まーね。
この人は昔からそう。
妙に義理堅くて、誰かと約束したことは最後まで守り通す人だもん。
元より事務所に恩義を感じてる人だから、事務所に口止めされてんならオレが何度聞いたってこれ以上は絶対に喋んない。
むしろ独り言なんて零してくれたところに感謝するべきなんだろうね。
そーいう意味では、味方だったら絶対的に信頼できる人ではあるんだけど…
やっぱ、敵に廻すと怖い人。
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巻き込むワケにはいかない。→←貴方には、そんな気持ちわかんないかもしんないけどさ。
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作者名：kico
| 作成日時：2017年9月27日 15時
