貴方には、そんな気持ちわかんないかもしんないけどさ。 ページ44
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「…調べてみましたら、あの車を所有しているのは、お世辞にも柄が良いとは言えない興味本位な男性向けゴシップ雑誌を出している会社でした。
編集部にも悪い噂が絶えず、出入りする輩の中には私利私欲のために暴走してトラブルを起こしている連中も混じっているようです。
あの車が二宮さんのマンションの前で長時間張り込みをしているという情報も入っていますので、念には念を入れて。気を付けてください」
「……」
ミイナと付き合ってる時に、マネージャーから何度も聞かされた。
出版会社や新聞社にもいろいろあって、中には記者とは名ばかりで、スクープした写真をネタに事務所を通さずにタレント本人を直接脅して甘い汁を吸おうとするヤクザまがいの奴らもいる。
グラビア始めたばっかの子が事務所に内緒で金を払って解決しようと言われるがままついて行ってひどい目に遭わされて、今度はそれをネタに恐喝の二次被害にあってしまったとか、
売り出し中の若い男のモデルが事務所抜きで交渉しようとしてその手の男色家に手籠めにされた、
なんて笑えない話も聞いたことがある。
でもさ、そんな奴らに関わり合わないようになんて、今更じゃん。
前から承知してることなのに、なんでわざわざ？
どっかの追跡車が尾けてくるのも日常茶飯事。
この人がここまで気にする事じゃないはず。
ハッキングされたデータの流出未遂にしちゃ、何だかピリピリし過ぎてる。
「なんかさ…悪いんだけど、さっきから話がころっころ変わってどういう流れなのか全く見えない。
もうちょっとわかりやすく言ってもらえません？」
「……」
「貴方さ、他にも何か知ってんでしょ？」
「……」
「何と言われようと、今のオレには守りたい大切なもんがあんだよ。
貴方には、そんな気持ちわかんないかもしんないけどさ…」
「……。これから先は、私の独り言です」
「え？」
「…事務所には情報屋以外からも様々なネタが持ち込まれます。二宮さんも知っての通り、この手の情報は廻るのが早いので、事務所が突っぱねたネタはうちと良好な関係を続けたいメジャーな週刊誌やスポーツ紙は買いません。
買うとするならば小さなゴシップ雑誌。ちょうど後ろの車で尾けてきている雑誌のようなところです」
「それって…」
「…二宮さん、念の為にお尋ねします…」
ミラー越しにマネージャーがオレのパーカーを見た。
「仕事以外でそのピンクのパーカーを着ることもありますか？」
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作者名：kico
| 作成日時：2017年9月27日 15時
