淡いオレンジ ページ34
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「じょ、冗談…」
「本気だよ、本気(笑)。お任せコースで宜しく」
「お任せコース！？」
「そ。Aが好きなようにオレのこと癒してくれるスペシャルコースね。も、存っ分に―――…」
話の途中で、いきなりふっとエレベーターの灯りが消えて真っ暗になって。
「！！」
「きゃっ！？な、なに！？」
和也の右腕にしがみつくと、左腕が私の腰を無言で引き寄せた。
「…なーに、素っ頓狂な声出してんだか(笑)」と笑われて、少し平静さを取り戻す。
「これって、あれでしょ。
しばらく誰もボタンを押してないから、エレベーターが利用されていないってことで中の照明が落ちたんじゃないの？」
動じた様子のない和也に、ああ、そうか…と落ち着いた。
前にエレベーターの利用の件で苦情があった時に、うちの社屋のエレベーターの構造とシステムについて詳しく調べたことがある。
社員用エレベーターは旧式だけど、災害時には予備電源に切り替わったり、省エネ機能で一定時間利用者がいない場合は消灯したり。
新型と同じようにコンピューターによって制御されているって仕様書に書いていたっけ…。
階数ボタンを押す人が居ないから、利用者が居ないとコンピューターが判断したんだ。
暗闇に“開”ボタンだけが薄ぼんやりと淡いオレンジに光っているだけのエレベーター。
乗り慣れてるはずなのに、こんな状況は初めてで、不思議な感じ…。
呆然としていると、くふっと笑い声が聞こえた。
「すげーな。なんか、すんごいタイミングよくない？」
「え？」
「ほら、癒してくれんじゃないの？電気消えてから、オレね、ずーっと待ってんですけどー」
甘えたような…それでいて拗ねた口調。
なんだか可愛い。
「ここでの収録はトーク撮ったら終わりだけど、今日はまた場所を移動して別のお仕事が入ってて、終わりがいつになんのかわかんないの。
今のうちにAに補給してもらっとかないと、動けなくなるかもしんないよ？ね？」
「もう…そんなことばっかり(笑)」
どうしよう。
真っ暗だし、誰もいないし…。
ちょっとだけなら…大丈夫かな…。
ぼんやりと見えてきた口元に、背伸びをして…。
「お疲れさま…」
ほんの一瞬、ちゅっ…と口付けると…。
待ってましたとばかりに、ぎゅーっと抱き込まれて、顔がその胸に埋められた。
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作者名：kico
| 作成日時：2017年9月27日 15時
